2006年9月8日金曜日

ミスター・ソウルキャブ


深夜の堺市界隈を、アフロヘアでブリブリのソウル・ミュージックをかけながら流す個人タクシーがある…。
というような話を聞きつけたのが、5月半ばのとある飲み屋さんでした。

ソウル好きのオレとしては乗りたいじゃないですか♪

ので、件の話の主を頼って何度かコンタクトをとろうと試みた結果、昨日、やーっとアポがとれましたよ。
一応、仕事にして、取材の体裁はとってるんだけれども、完全に趣味ですな、オレの。

待ち合わせの大阪・ミナミのソウルバーに現れた男性は50歳くらいです。
アフロヘアで…、あれ、違う? 髪は、長いけれども、ポニーテイルです。

「アフロにしたことはないですよ(笑) それはデマですね」

そうなのですか。
彼の名前は、通称「OTIS」。数百人はいる黒人の友だちにも「OTIS」の名で呼ばれている彼こそが、ミスター・ソウル・キャブ☆

「まあ、僕はとにかくソウルが好きでね。特にオーティス・レディングが好きなんだけれども、車内にはソウルにかぎらず、ファンク、ラップ、ブルーズ、レゲエ、ジャズなど、黒い音楽を用意してますよ。お客さんが乗ってきたらそれを流してあげて、気持ちいい音楽を聴きながらリラックスして家まで送れたらいいな、と。そういうものなんです」

う~ん。素晴らしい。ソウル・ミュージック好きが高じて、自分のお商売にソウル・ミュージックを持ち込んだ人といえば、道頓堀の焼肉屋の『セックス・マシーン』が思い浮かびますが、あそこもジェームス・ブラウン好きが高じて、店名、店内、ジェームス・ブラウン一色。でも、今は代替わりしちゃったしなぁ。

「でも、みなさんがソウル好きってわけでもないですから、やっぱり相手を見ながら曲を選んであげるんですよ。若いコなら、アイズレー・ブラザーズみたいな軽いかんじのやつとか。カップルだと、メチャ甘のスウィートなやつとかをね」

ははは。運転しながらDJまでやっちゃってるかんじですね。
ちなみに、車のなかでソウル・ミュージックを流しっぱなしにして、ぼちぼち15年くらいになるそうです。
堺が根城ですからオレは気づかなかったけれども、大阪市内なら、絶対にオレのアンテナに引っかかってたでしょうね。

市内から北は走ってくれないんでしょうか?

「いや、そんなことないですよ。どこでも行きますよ。ただ、やっぱり、堺で流してることがほとんどだから、大和川から上はあんまり行かないですけれどもね」

こんなタクシーだと、お客さんとのあいだで、面白いエピソードなんてゴロゴロあるんじゃないですか?

「オレ、意地悪だからさ。お客さんが乗ってきて、オレもオーティスが好きでさぁなんて言ってると、黙って話を聞いてるのね。それで、ひととおり話が終わったあとに、すげえディープなやつとかをかけちゃうわけ。知ったふうなことを言うお客さんには、そういうことしちゃうときもあるね。逆に、真面目にソウルを歌ってるなんていう若いコには、これも聴いたらいいんじゃない?ってアドバイスすることもあるよ」

まさにソウル伝道師です。
このミスター・ソウル・キャブ、最初は敬語で話してたんですが、だんだん地金が出てきたというか、結構、口調がぞんざいになってきて、いいかんじです☆ 根が、不良なんですよね。ちょい悪とかじゃなくて、普通に、不良(笑) 大好きです、そーゆー人。

だいたい、ここまでソウル好きだと、黒人になりたいと思うものです。
オレの知り合いにも、なんでオレを黒人に生んでくれなかったんだ!と、泣きついた連中がわんさといますから(笑)

「そりゃ、あるさ。というより、なんでオレが黒人に生まれてこなかったのか、わからん。今でも、なれるものならなりたいね、黒人に」

この人、きっと死ぬまでソウル・キャブやってるでしょうね♪

取材の帰り、大阪・ミナミから天満までOTISさんのソウル・キャブで送ってもらいました。堺とは真逆の方向だったので、心苦しかったのだけれども。でも、賃走だし。

車内にしっかり組まれたサウンド・システムのドープな低音で、ディープソウルを聴きながら走る大阪市内は…、悪くないです☆

途中、OTISさんの携帯が鳴りました。運転中にもかかわらず、携帯に出るOTISさん。
「ああ、仕事終わったの? じゃ、家に来いよ。迎えにいくからさ~」

OTISさん、今のは?

「ああ、彼女。オレ、今でもメチャメチャ遊んでるからね。彼女っていっても、たくさんいるんだけれどもさ、ハッハッハ」

さあすが、ファンキー・ソウル・キャブ☆ 不良だ!


otis redding / My Girl

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