2006年9月12日火曜日

職人気質だけが拠りどころの職人さんへ


相方さんの新作、「room shoes」が好評らしいです。

裸族のオレにはさっぱり理解出来んのですが、5200円もするくせに、売れてるらしいんですよ~(笑)

売っているのは、京都の本屋さんで、最近はオシャレ雑貨に力を入れている恵文社さん。
通販サイトもありましてですな、そっちでも販売中。
(ジャイ子さん、お買い上げありがとうございます☆)
恵文社さん通販サイトはこっち。
(top>雑貨>恵文社の生活感>台所道具、住まい、布物・子ども服)

彼女にとって、企業さんらしい企業さんと取引をするのは初めてのこと。
なので、細かいトラブルもあるみたいですが、ここでそんなことを具体的に書くわけにはいかないので、そっちは割愛するとして、ま、頑張りなされ、と。なにごとも、いい経験です。

ただ、以前から、機会があるごとに言うんですが、
どーも、職人気質が抜けないというかね。
ここらへんが、今の、壁ですね、彼女の。

使う人のことを考えて、いいものを頑張ってつくる…、
こだわるところはこだわればいいし、無駄なこだわりだと思うところはこだわらなければいいし、安く出来るのなら安くすればいいし、早く出来るのなら出来るだけ早くつくる。
それは、つくり手としてはあたりまえ。

職人気質って、こんなところですかね。
でもね、それだけで生き抜いていけるほど、今は、牧歌的な時代じゃないのですよ。

つくり手の思い入れとこだわりだけでモノヅクリが成立するような牧歌的な時代は、幸か不幸か、とうの昔に過ぎ去ってしまいました。

今、やっぱり、販売や自己プロデュースを念頭に入れてないと、ただ、いいものをつくる、だけでは無理です。甘いですわ。

たとえば、
使う人が心底喜んでくれるようなものをつくったとします。
でも、それを売るのは小売店の販売員です。小売店の販売員の人が、その品物に込めたつくり手の思いを理解していなければ、それは使う人にまでは伝わりません。伝わらなければ、どんなに素敵な品物であっても、売れない。
職人さんがつくるものは、作品ではなくて商品だから、売れなければ、それはどんなに素敵なものであっても、ゴミです。

だからこそ、ビジネス感覚というか、商売人としての資質が、職人さんにも求められます。ましては、フリーランスでモノをつくっている人なら、職人と商売人の資質の両方が、絶対に求められます。

この商品は、こういう人に使ってもらいたくて、つくりました。この商品の特性は、こういう人たちに絶対に訴求するはずです。
ただし、それをわかりやすく伝えるためには、売り場でこういうふうにディスプレーしてもらって、こういうトークをしてもらわないと伝わりません。
この特性さえ、この層の人たちにきちっと伝われば、この商品は、この価格でじゅうぶんに売れるはずです。
この価格で売ることが出来れば、ウチはこの値段で卸しますから、そちらにはこれだけの利益が出ます。そうなれば、お互いハッピーですよね。

こういう商談を提案出来なければ、つまり、自分がつくったものをプロデュースすることが出来なければ、販売の人は乗ってきませんね。
商売とは、売り手と買い手が等しくハッピーになる取引の総称ですから、相手が儲かることを提案してあげて、それに自分がこういうかたちで協力する、そうすれば、あなたが儲かり、あなたが儲かることで私も儲かる、そういう話を持っていってあげないと、誰も動きません。みんな、忙しいからね。

つくり手からの視点で話をしていますが、売り手だっておなじことです。
こういう品物があれば、こういう層にこういう展開で売れるから、つくれないか?と、売り手からつくり手に向けて提案がなされるのなんて、しょっちゅうです。
川上よりも川下のほうが強くなり出した80年代後半くらいから、流れは、まさしくそうでした。

コンビニに置いてあるポッキーの箱のサイズが小さく薄くなったのは、まさにそういうことですね。
少しでもサイズを小さくして、たくさんの商品を置いたほうがより多く売れると確信したコンビニが、メーカーにサイズダウンを提案して、そういうことが実現しました。

だから、売り手からつくり手に向けてのメッセージというのは、この15年で完全に定着しているんですが、逆方向の、つくり手から売り手に向けての提案というのがね、つくり手さんの職人気質が邪魔をするのか、まだまだ足りないように思うんですよね。

ウチの相方さんは、モノをつくることばっかりやってきた人だし、売るということに関してはまったく未経験の人だから、そのあたりの感覚が、決定的に欠けてます。

未経験なのだから仕方のないことなのだけれども、それでは、生き抜いていけないので、今、そういう話をずーっとしているところです。いろいろと勉強してるみたいですけれどもね。

たとえば、オレは、原稿を書いたり印刷物のデザインをしたり、webサイトを構築したりする仕事をしています。
で、たとえば、沖縄に行きたいなあ、と思ったとします。南の島を数週間かけて点々とまわってみたいなあと思ったとします。でも、そんなカネも時間もありません。
ならね、
どっかの雑誌社に目星をつけて、オレが沖縄に行ける企画を考えて提案しますね。
今、沖縄がブームだけど、どこもかしこも似たような記事ばっかりで読者もそろそろ飽きてきてるでしょ、だからね、もっと違う視点で、○○な視点で沖縄を捉え直したら、新鮮な記事が出来るよ、それをやれるのはオレが最適だから、この企画やりましょうよ!
って、ザクッと言えばそんなかんじで、提案しますね。
提案次第で、自分のやりたいことは実現出来ますから。
オレは自分の仕事がモンキー・ビジネスだって自覚がありますから、他人のカネで自分のやりたいことが出来るようにすることばっかり考えてますけれどもね。

ニットなら、
新進の女優さんやモデルさんに目をつけて、ひとつのテーマを決めて、そのテーマに沿って彼女が素敵に着こなせるニット服を数点つくる、あるいは編み図を書く。で、それを雑誌社に持っていって、こういう企画で、このモデルを使って、服はこんなのをつくるから、これで誌面展開したら、メチャクチャ素敵な誌面になるよ!
って、提案します。

漫画家の卵が漫画雑誌の編集部に作品を持って売り込むよりも、カメラマンの卵が自分で撮った写真を持って雑誌の編集部に売り込みむよりも、自作のニットを持ち込んで、「なにかのときに使ってください!」って売り込むよりも、こうした提案のほうが、はるかに聞いてくれます。ほとんど、相手の(編集部の)仕事の領域に踏み込んでるからね。

そういうね、相手が儲かることを提案してあげて、そのなかで自分を売り込んでいく、そういう、自分と自分のつくったものの両方をプロデュースする能力を磨いていくことが、ただ単に職人気質の持ち主で終わるかどうかの、分かれ目だと思っています。

だからな、相方さん、頑張れよ。

room shoesだってね、国際線の飛行機のなかで履いてもらえるために航空会社に売り込む、→乗客に喜んでもらえたら航空会社の株は上がる。
超高級ホテルのアメニティ・グッズとして、ホテルに売り込む、→宿泊客に喜んでもらえたらホテルの株は上がる。
そのことが雑誌に取り上げてもらえるようなことにでもなれば、航空会社、ホテルの株はさらに上がり、あなたの名前も世に出る。

…というふうにね、量産と安定供給の問題をクリアしないとダメだけれども、プロデュース次第で、いろんな販売チャネルを開拓することは出来ます。


繰り返す。
商売とは、相手を儲けさせることで自分が儲かる取引のことなのですよ。
自分が出来ること、で、留まらず、自分が出来ることを使って相手を儲けさせることを考える、ここまで出来るようになると、殻をぶち破れるし、壁を乗り越えられます。

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