2008年1月12日土曜日

引き続き、知事選で思うこと

昨日の続き。

今日あたりから大阪では知事選がらみのニュースがバンバン流れているんですが、どの候補者も、府政を変える!って言うんですよね〜。

変えるというのは、どういうことなんでしょうかね?

政策を、福祉重視にする、景気対策に注力する…、ビジョンはそれぞれにあると思うんですが、これは、いくらトップダウンとはいえ、府知事ひとりで出来ることではなくて、議会の承認をとりつけないとダメなので、議会とどのように付き合っていくか、に、かかってきますわな。

田中康夫が長野県知事に就いたときに、脱ダム宣言をしたけれども、実際にそれを実行するにあたって、議会のものすごい抵抗にあい、エラいこと苦労してました。

最近だと、滋賀県知事が、すでに決まっていた新幹線の新駅の建設を中止させましたが、これとて、議会の抵抗がすごくて、どえらい労力を使ってはるように見受けました。

ワン・プロジェクトであっても、議会の大勢と意見を異にすると、その調整は、並大抵ではないです。
改革派を標榜する知事の基盤は、大抵が少数野党になるので、必然的に、議会の大勢とは異なりますから、これはなかなかしんどいですよ。

で、勢い、対立姿勢を打ち出すことが多いですが、なにかを成し遂げるときに、内部が対立した状態でそれを行なうのは、ムチャというもんです。
大阪は判官びいきの土壌があるから、不利を承知で既得権益とケンカすると府民には受けるんだけれども、反目しあっている以上、受けるだけで、コトが前に進んでいかないことは、火を見るより明らかです。

普通ね、どんな職場でも、職場内に派閥があり、反目しあっていたら、仕事は前に進んでいかんでしょう。それとおなじことです。

もちろんビジョンは大切なんだけれども、それとおなじくらい、議会人とコミュニケーションをとれる、説得出来る能力があるかないか、が、大切ですわな。マニフェストが大流行りなので、政策にばっかり目が行くんだけれども、オレはやっぱり、こっちのコミュニケーション能力があるかないかのほうが大切だと思ってます。

さて、府民の多くが納得出来るビジョンを掲げ、そのビジョンを実現するために議会とコミュニケーションをとれる能力もあるとして、次に大切になってくるのは、役所を動かせることが出来るかどうか、です。

府知事は立法府の長ではなくて行政府の長ですから、行政がきちんと機能せんことには、どんな条例をつくっても、意味ないですから。

たとえば、景気対策や中小企業の救済の一環で、府が保証人となって、低金利で1000万円を貸し付けるといった条例案を知事が議会に提出し、議会をまとめて、その条例が賛成多数で成立したとします。
で、条例成立を受けて、オレのような中小企業事業者がいそいそと貸し付け申請をしたとします。ところが、会社の財務内容が悪いだのなんだのと窓口で難癖をつけられ、審査に散々時間をかけられた挙げ句に今回の貸し付けは無理です!なんて回答を出されたら、せっかくの法案が成立していも、まともに運用されないことになります。


福祉条例なんて、立派な条例が出来ても、現実には、役所の窓口で断られて、条例そのものがまともに運用されていない例なんて、たくさんあります。
ベンチャー支援のための貸し付け法案なんて、5年間実施して、貸し付け実績ゼロですから(笑)

こう考えると、政治の場合、方針やビジョンを変えるということは、そこで働く役所の人間の意識を変えるということに、他ならんですね。
会社とおなじで、トップで中長期計画を立てたとしても、それだけではコトはなにも進まなくて、その計画の意義を社員全員に浸透させ、一丸となるように持っていかないと、せっかくの法案も宝の持ち腐れになってしまいます。

さて、意識改革というのは、どこでも語られることですが、難しいですね。

むかしね、ある会社を買収したことがあって、経営権を買い取ったことがあります。
その会社は、伝統こそあるのですが、往時とは比べものにならないほど業績が悪化し、目も当てられないほどでした。
なぜそこを買収したのかというと、関西では唯一のことをやっている出版社で、ニーズもあるし、存続させる意義もあると感じていたので、社員のみんなの意識を変えることが出来たら、きっと上手くいくと信じたからです。

まず、給与体系を見直して、仕事を数値化出来るようにして、仕事の質量と給与がある程度正しく比例するようにしましたな。これで、金銭的なモチベーションをあげる。
次に、ひとりずつ面談して、今後のビジョンを説明し、粘り強く納得させ、納得してもらえない場合には、退職してもらうことにしました。
そうやって、全員が、ひとつのビジョンに向かって一丸となる体制をつくっていったのですが、並大抵ではなかったですよ。

一番強く説いたのは、この仕事の意義を説いて、プライドを持たせることでした。
世のなかに必要とされることをしていて、その仕事をすることで喜んでくれる人がたくさんいて、その笑顔を見るためにも、とことん仕事をしてみないか、と、繰り返し繰り返し、説いたのでした。
そして、喜んでくれる人がいるのだということを実感することが出来る仕組みをね、つくりました。

これを、繰り返し繰り返し、説きましたわ。
この、繰り返し繰り返し、というのが大切で、これがね、イヤんなるほど、説き続けなければなりません。でも、これを怠るわけにはいかんのですね。人の意識を変えるというのは、並大抵ではないですから。
でも、これは、経営者なら、誰でもやってることですが。。。
経営者ならやるけれども、管理職レベルでは、ちょっとしんどいかも、ですね。

人間は、プライドを持たせて、自分が必要とされていることを実感出来る場所にいると、それがモチベーションに繋がります。その意識をひとりひとりに植え付けることが出来たら、経営の仕事は半分は達成したも同然です。

そうやって、ひとつの方向に全員を向かせることが出来ると、人数以上の力を引き出すことが出来ます。
経営がやる仕事で一番労力を使うのはここなのですが、これを行政に置き換えると、知事がやる仕事はこれですね。

ただし、府庁は巨大だし、労働組合も強力なので、それこそ、途方もない作業になります。
人間的な魅力も、相当に大きな魅力がないと無理ですな。
リーダーシップというのは、コミュニケーション能力と、意識付けをしてあげられる能力のことなのですが、果たしてどの候補者に、これがありますかね?

役所は商売がヘタクソだから、ビジネス感覚を! そして行政のトップは経営者感覚を!なんてことが叫ばれますが、こと、経営者の感覚と言ったときの中身は、そういうことになります。

さて、候補者のなか、誰が経営者感覚を持ってますかね?
ざっと見渡してみたところ、おなじみの橋下弁護士だけが、自身の法律事務所を経営する経営者としてのキャリアを持っているのですが、橋下弁護士だけってのがね…(笑)

ちょっと笑ってしまいます(笑)


ひっさびさにトム・ウエイツを聴いとります〜。レイン・ドッグをやっていたころのトム・ウエイツも、それ以外の時代のトム・ウエイツも大好き☆

本日の1枚:
『Rain Dogs』
Tom Waits

0 件のコメント: