2008年1月14日月曜日

ケータイ小説

今日、仕事でですな、いきなり、机のうえに、ドン!と、本を二冊置かれて、レビューお願いしまーす!って、軽い調子で言われましたわ(笑) ふた周りくらい若い編集の男の子に。。。

美嘉って人の『恋空』って本。誰やねん?

ケータイ小説らしいですな。
そーいえば、ケータイ小説って言葉はよく耳にするけれども、読んだことないですわ。これが初めて。

めんどくさいなーって思いながら読んだんですが、あまりの読みやすさに、上下巻で1時間足らずで読み終えてしまいましたわ。

普通の女子高生の主人公である美嘉は、ちょっとしたことがきかっけでヒロと知り合って付き合いはじめます。べつのカップルとダブルデートしたり、一緒に授業をサボったりしてます。
んで、ある日、妊娠しちゃうんですよね。ちゃんと避妊しろよなー。でも、転んで流産しちゃう。妊娠してんだから、気をつけろよなー。で、それはそれでショックなんだけれども、それがきっかけでまた深く繋がっていく、と。
ところが、です。
ある日、ヒロがわかれを告げるんですよね。で、ふたりはそれぞれべつの人と付き合うんだけれども、あとになってね、じつはヒロは末期ガンで、美嘉には幸せになってほしいからということで、わかれを申し出たことが知れ、美嘉は今の彼とわかれて、元カレのヒロのもとへ走っていく…。
それから抗がん剤治療をして、奇跡的に3年も生きながらえるんだけれども、結局は、ヒロは死んじゃうんですよね。でも、ヒロの死後、美嘉は彼の子供を身ごもってることを知り…。

とまあ、そういうお話。

ふーん、ってだけですけどね(笑)

でもこれ、少女マンガのパターンですな。婦女子さんが熱狂しやすいストーリーがてんこ盛りというか、ちょっと理不尽な不幸ネタあり、運命的な出会いあり、裏切りあり、色恋あり…、まあ、わかりやすいお話ですわな。

売れているとのことですが、ケータイ小説というのは、既存の小説は難しくてわからないっていう層にニーズがあるんだとか。
というか、ケータイ小説ってのは、携帯で読む小説のことでしょ? ってことは、その小説の中身ではなくて、メディアが、書籍か携帯画面かって違いだけじゃないのか?
携帯にアップされている小説というのは、総じて、わかりやすい言葉で書かれている傾向でもあるのでしょうかね? この本も、印刷された書籍ではなくて、携帯の画面で読むとまた違った印象があるんだろうか?
 
というか、そもそも、携帯のどこにケータイ小説があるのか、オレ、わかってないんですけど…。

ただ、この『恋空』にかぎっていうと、描写が貧弱すぎますわ。比喩はない、オリジナルの言葉はどこにもない、どの視点で書いているのかもよくわからない…、結局のところ、出来事をただ順番に並べているだけ、というもので、これは小説でもなんでもないと思いましたですな。

なので、小説として表現される必然性がまるでないという、不思議なシロモノでした。

それでもバカ売れしているのは、身近な設定と、徹底してわかりやすい言葉で書かれているからで、そのせいで、ある種の親近感を持つことが出来るからなのだと思います。
それでも、小説というものは、つくりものなので、つくりものである以上は、徹底的に嘘をついて、そのうえでリアリティを持たせ、真実をあぶり出す、という作業をしてもらわないことには、それを小説と呼ぶことには、抵抗がありますね。

ただ、このジャンルに人が集まっているということは、そのなかからホンモノも出てくる可能性も高い、ということです。
消費のされかたのスピードが尋常じゃないから、あっという間に廃れるかもしれないけれども、この手のものは、かたちを変えて残っていくんだと思います。

さらにいえば、かつて、白人化されたブラック・ミュージックであるモータウンが、より黒いホンモノのブラック・ミュージックへと誘う扉となる役目を果たしたのと同様、ケータイ小説をきっかけに、ホンモノの小説へと向かう人も出てくるかも知れませんな。


昨日に引き続き、バルカン・ミュージックを☆

本日の1枚:
『Bulgarian Chicks』
Balkan Bea Box

0 件のコメント: