2006年7月9日日曜日

欽ちゃんの野球





こないだ、萩本欽一率いる野球クラブチーム、茨城ゴールデンゴールズの練習風景を伝えるテレビを観ていました。

じつは、欽ちゃんのクラブチーム、あんまり興味なかったんです。
東京の芸人だし、茨城のチームだし、大阪には阪神タイガースもあるし、クラブチームならNOMOベースボールクラブもあるし…、要は、いろん意味で、距離が遠いんですよね、オレにとっては。

なので、テレビも、なんの気なしに見てました。
でも、ちょっと見入ってしまった。

そもそも、こうしたクラブチームは、社会人野球の廃部・休部に伴って野球をする機会を失われた選手たちにプロを目指す場所を提供することを目的として、設立されました。
もちろん、野球を通じて人生や社会を豊かにする、という第一義的な目的があるのは大前提ですが、実質は、衰退しつつある社会人野球の受け皿という役割を負っています。四国の独立リーグなども同様ですね。

だから、もちろん、普通に野球の練習をしてるはずなんですが…、
欽ちゃんのゴールデンゴールズの練習は、ちょっと違う。

エラーをした後、イニングが終わってベンチに引き上げてくるときの練習をね、何度も何度もやってるんですよ(笑)
「エラーしたからって、下を向いて帰ってきちゃダメだ。ちゃんとお客さんを見て、笑顔で帰ってこなきゃ! はい、やり直し!」
欽ちゃんの檄が飛んでます。
野球にエラーはつきものなんだから、エラーしたからっていちいち下向いてシュンとしてたら、ベンチが暗くなっちゃう。ベンチが暗かったらヒットも打てないし、勝てないよ。だからね、エラーしても、笑って帰ってこい!
えへへへ、エラーしちゃいましたーっ!って顔して帰ってくればいいんだよ。
そうすればお客さんも笑ってくれるし、応援してくれるし。大体、お客さんは選手が下向いてる姿なんか見たくないんだよ。もっとお客さんを味方につけなきゃ。
欽ちゃんは言います。

お笑いで培ってきたものを、野球にぶちこんでるんですよね。
言われてみればまったくその通りなんだけれども、なかなか新鮮で、含蓄があります。

ある選手には、白粉を塗ってこい!と言ったそうです。
それだけでベンチが笑いに包まれる。
欽ちゃんは、ベンチが暗かったら勝てないってみんなわかってるのに、誰も明るくする努力をしない、と、嘆いています。そこで、白粉を塗ってこい(笑) 白粉塗っても、スタンドのお客さんからはわからないみたいですね。顔色がいいくらいに見えるんだとか。
これ、実際にやって来た選手がいるらしいです。

去年の全日本クラブ野球選手権にでは、準々決勝でNOMOベースボールクラブに負けました。
負けた理由を、欽ちゃんは、次のように分析しています。
「向こうに比べて、うちは物語が足りなかったね。勝負は、やっぱり、物語を持ってる人間が勝つよ。ウチの連中は、負けてもみんな泣かなかった。物語がないからだよ。ひとりだけ泣いたやつがウチにもいたけどね。そいつだけは、物語を持ってた」
これはつまり、その試合にかける思いが足りない、ということです。
それを、物語という、独特の表現で欽ちゃんは言い表します。

泣いていた選手は、高校卒業後にオリックスに入団するも3年でクビになり、その後、お父さんの援助でメジャーリーグを目指した選手です。でもダメで帰ってきた。そしたらお父さんが、簡単に諦めるな!と怒って、もう一度、彼のためにお金を工面しました。彼は、そのお金で再びメジャーに挑戦したんですが、またしてもダメで諦めて帰ってきた。ちょうどそのときに、欽ちゃんがクラブチームを立ち上げ、選手を募集していることを知り、入団。そういう経歴の選手です。親の援助を受け、何度か諦めかけたプロ野球選手として大成する夢を、彼は、まだ諦め切れずに頑張っている。そういう頑張りが、負けたときの涙となって表れます。

最後に、欽ちゃんは、とても素敵なことを言っていました。

夢はひとりで叶えるよりも、ふたり以上で叶える夢のほうが、実現しやすいね、と。
一緒に泣いてくれる、一緒に喜んでくれる人がいる夢でないと、なかなか実現しない、と。
プロ野球選手として大成したい、じゃダメなんです。
プロ野球選手として大成して、世話になった両親に立派な家を建ててあげたい、そういう夢でないと、なかなか実現しないのだ、と、欽ちゃんは言っています。

これはなかなか含蓄があるなあ、と思いました。

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