2006年12月13日水曜日

残すものと残さないもの

相方さんが、ほぼ日のホワイトボードカレンダーを買うか買うまいか、悩んでいるそうです。

これ、オレは知らなかったんですが、けっこう優れものですね。


1枚1ヶ月タイプのよくあるカレンダーボードですが、紙がホワイトボード仕様になっていて、消せるんですよね。

んで、これを買おうかどうか、って話なんですが。。。

オレだったら買わない、と、オレは答えました。

予定が変更になって書き直したりするのに威力を発揮するカレンダーで、それこそが、このカレンダーのセールス・ポイントだと思うんですが、オレは、変更になった予定もキャンセルになった予定も、消しゴムで消しちゃうのがイヤで、棒線2本で消して、ボツも変更も残しておくタイプです。

消しゴムで消しちゃうと、忘れちゃうでしょ。
予定が延期になって、しかもいつになるのかが未定だったり、キャンセルになったりしたものを、忘れちゃうのが、イヤなんです。ToDoリストとして残しておきたいというか、完全に終わらせるまでは、頭の片隅に残しておいて、気がかりも後悔もきっちりと受け止めておきたいというか、ま、そこまで大げさなもんではないですが、とにかく、消しゴムで消して、なかったことにするのは、ちょっと抵抗あります。

こんなことは人それぞれだから、その人にあった方法を見つけてやればいいと思うんですが、オレはそうしてる、と、相方さんに言うと、相方さんは、それも一理ある!みたいなかんじで、またまた悩んでました。なんか、悪いことしたかも(笑) ま、悩むだけ悩んで、試行錯誤もして、自分にあった方法を見つけてくださいませ。

逆のものも、あります。
たとえば、写真。オレは、どこに行っても、写真をまず撮りません。
若い頃、バックパッカーをやっていた頃、それこそ何年も旅をし、意気込んで、フィルムも100本程度は携帯してたんですが、途中から、パタッと撮らなくなりましたわ。
今、手元には数枚程度しか残ってません。
ここ何年かは京都のお寺さん巡りばっかりしてますが、それにしたって、写真を撮ったのは、気まぐれにほんの1、2回程度。資料として残したいと思わないこともないけれども、それもやっぱり、気まぐれにほんの1、2回程度ですわ。
素敵な風景と出会ったとして、それを写真に撮ったら、撮った尻から忘れちゃうんです、オレは。
匂いだとか、空気の澄み具合だとか、温度だとか、鼓動の動きとか、感情の揺れとか…、写真を撮っちゃうと、写真に写らないものを、全部忘れちゃいます。
だから、撮らないです。
んで、撮らないから、はてさてどんな景色だったかなと、忘れちゃうことも多いんですが、それはそれでいいのだと、思ってます。
忘れちゃうような景色なのだから、オレにとってはどうでも景色なのだろう、ということで。イベントもしかり。
でも、何年経っても忘れない景色、場面というのは確実にあって、いつまでも色褪せることなく、昨日のことのように思い出せるものも、たくさんあります。
オレは、それだけがあればいい、と、思ってます。100の写真よりも、そうした記憶が1つあるほうが、オレにとっては、大切です。
だからね、写真はほとんど撮りません。

カメラやレコーダーといった記録装置は、忘れるためにあるのではないか、とも思います。
どっちにしろ、どんな高性能カメラの被写体深度よりも、どんな高性能のレコーダーのレンジよりも、自分の目と耳を信用しているってことです。

ま、これも人それぞれのやりかたでしょうから、オレはそういうやりかた、ってことですけど。

少し違う話になるけれども、10代に観た映画で『ストリート・ワイズ』というのがありまして、主題歌をトム・ウェイツという人が歌っていました。その歌がね、ものすごく印象に残ってるんです。そのときの自分の置かれた状態なんかも、すごくよく覚えています。
トム・ウェイツという偉大な酔いどれ詩人をきちんと知ることになるのは、ずっと後年のことで、彼のアルバムはほとんどすべて聴いているのですが、それでも、あのときに映画で聴いた彼の歌がなんだったのか、未だに謎のままなんです。
きっと、これまでに聴いてきたアルバムに収録されている曲のどれかだと思うんですが、思い当たる曲はなく、それ以上は調べていません。
きっと、オレの頭のなかで、別種の曲になっているんでしょうが、それでいいと思っています。
もしかしたら、映画で主題歌を歌っていたのは、案外、トム・ウェイツではなかったのかも知れないですが、オレのなかでは、あの映画の主題歌はトム・ウェイツが歌っていたことになっているし、その歌ははっきりと覚えているし、ある印象とともに、自分の胸のなかで生き続けています。
事実を確認するよりも、自分の記憶のなかにあるそうしたもののほうが、オレにとっては大切です。

話を戻します。

仕事でいろんな人にインタビューも、します。
しますけれども、レコーダーをまわして録音することは、滅多にありません。
出来るだけメモをとるんですが、会話のスピードに追いつけるわけはないから、全部が全部メモれているわけでもないです。
でも、インタビューが終わって、後日、メモを見ると、メモに書かれている言葉の断片がきっかけとなって、インタビューの全体をぱーっと思い出しちゃう。
3年前に、生涯で最長の18時間インタビューというのをやって、それこそノート丸々2冊分をメモったんですが、そのメモだけでノーカット版のインタビュー原稿をちゃんと完成させることが出来ました。
逆に、録音してると、録音してる安心感があって、なにも覚えてないんですね。テープを聞いても、こんな話だっけ?ってくらいに(笑)

これも、ライターさんによってやりかたはいろいろだから、結局のところ、記憶のメカニズムは個人によって違うってことになるんでしょうね。
こうしてみると、オレの記憶のメカニズムは、どうやら、文字情報が記憶の引き出しを開く触媒になってるみたいです。
さて、では、記憶とはなんなのだということにもなっていくのですが、話が難しくなってきたので、ここらでお開きに(笑)

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