2006年12月30日土曜日

今年の読書


商売柄ってこともありますが、毎年、年間で300冊オーバーは本を読みます。1日に1冊というわけではなくて、同時進行で何冊も読むから、1週間で7冊前後って読みかたです。
それが、今年は200冊に届かんかったです。
理由は簡単で、本を読む時間がmixiに費やされているわけで。。

ほいで、今年の読書を振り返ってみますと…、

まず、小説は、ほとんど新作を読まんかったですな。読みたくなるような新作小説がね、ほとんどなかったですわ。
年明け早々の発売された瞬間に買ったのが、劇団ひとりの『陰日向に咲く』。
モチーフ自体は、ちょっと変な人のちょっと変な話で、純文学ではよくある手法。それ自体は手垢まみれで面白くもなんともなかったけれども、文体のリズムがね、淡々としていてよろしかったですな。ちょい体温低めで、2006年のリアルを上手く体現してました。お笑い芸人だからこそテンポを考えるだろうし、それが文体に上手くいかされていて、そこが新人離れと呼ばれる所以。この人の書くものは、好きです。

テンポやリズムのよさをもっとも感じさせるのは、舞城王太郎ですな。
2年前の『煙か土か食い物』から大注目していて、いつブレイクするか!と待ってるんですが、今年も小ブレイクで終わった作家。それでも、新作の『好き好き大好き超愛してる』は、グイグイ読ませましたけどね。その饒舌さ加減は、諦めから来ているのだと思うので、音楽でいうと、ハウス・ミュージックのノリに近いですかな。快感の中枢神経を刺激するのよね。というか、それが目的で書かれているような気すらします。そこがね、かなり新しい。マニアの愛玩物で終わってほしくない作家なので、来年も期待します☆

そしてオレの大好きな平野啓一郎は、今年は新作を発表してくれませんでした。文庫化されたのがいくつか出たので、そっちで我慢したけれども、来年こそは新作を読みたいですな。ただ、文庫化された『高瀬川』は、これまでの作品よりも読みやすい文体にはなっているけれども、詩と小説のあいだを繋ぐかのような実験がなされていて、改めて読んでみても刺激的でしたな。

新作の小説で目を見張るようなのは、それくらいでしたかね。
あとは、梁石日、白石一文、横山秀夫ら現代作家の作品の読み返し、松本清張の復刻シリーズ、山田風太郎の旧作、プイグら南米の作家の旧作、『ゲド戦記』と、再読したのが多かったですわ。再読が多いということは、それだけ新作で面白い作品がなかったということですが。

次から次へと新しい作家は出てくるんだけれども、定型文のバリエーション違いばっかりで、これまでの物語定型をぶち破るような試みをする作家がほとんどいないのが残念。それと、描写の妙がね、どいつもこいつも陳腐すぎます。
その意味で、物語の定型をぶち破らんとし、かつ新しい描写の試みを繰り返している平野啓一郎はこれからも注目だし、舞城王太郎は新しい描写を獲得してますな。

漫画は、ほしよりこの『きょうの猫村さん』、西原理恵子の『毎日かあさん』のそれぞれの新作、ジョージ秋山の『アシュラ』の再発あたりを。あと、夢枕獏の『神々の山嶺』を谷口ジローが漫画化したのを。ハッとさせられるコマ割りをするのは、今んところ、この3人くらいですかな。あとは惰性で、くらたまの『だめんずウォーカー』とか読んでます。

こうして見ると、今年は、物語関係では、オレの心にドカンと突き刺さってくるものには、出会いませんでした。

翻って、ノンフィクションは、相変わらず、たくさん読みました。

サッカーの日本代表監督にオシムが就任して、昨年の発売直後に買った『オシムの言葉』はソッコーで再読。ついでにストイコビッチを軸にしてバルカン半島情勢を読み解いた木村元彦の『誇り』と『悪者見参』、宇都宮徹壱の『まぼろしのサッカー王国 スタジアムから見た解体国家ユーゴスラヴィア』『ディナモ・フットボール 国家権力とロシア・東欧のサッカー』も再読。
ユーゴ出身のサッカー選手を扱うノンフィクションは、ユーゴ紛争に触れないわけにはいかないから、勢い、大きな視点で書かれるものが多くて、バルカン半島を俯瞰出来る楽しみがあります。このあたりの本、いつ読んでも面白い。

あとは、司馬遼太郎の対談集が文庫で刊行され続けたので、出るたびに。未収録部分が少ないので、大半はどこかで目にしたものばかりだけれども、それでも、改めて読んでみても、その彗眼には驚かされっぱなしです。ナショナリズムについての話は、オレは、彼の言葉を指針にしてるし。今もって、一番、言葉を聞きたい人で、鬼籍に入られたことがまだ寂しいです。。
歴史物は、NHK教育で放送している『知るを楽しむ』やら『歴史に好奇心』のテキストを何冊かと靖国関係、満州関係、ペルシャの歴史について、アイルランドの歴史、バスクの歴史、ジプシーの歴史…、そのあたりを。
あ、京都の庭、寺、仏像関係も、何冊か読み漁りましたな。

あと、早川文庫から出てるノンフィクション・シリーズから、ココ・シャネル、マタハリ、マリア・カラスあたりの女性偉人伝めいたものを。

高山なおみさんの『日々ごはん』シリーズ(こないだ、第8集が出ましたな☆)、『記憶のスパイス』も、もちろん購読。調理器具を極力排し、自分の指先の感覚に頼っていこうとする彼女の料理観は、やはり刺激的です。さらに、音楽と料理が分ちがたく存在しているその生活ぶりも。

辺見庸はブッシュ政権に対抗軸を築くときのオレの拠りどころの一人ですが、今年は恥について重点的に書いてましたな。『いまここに在ることの恥』にまとめられ、そっちで一気読みしました。マスメディアの堕落っぷりについての現状報告が主でしたが、まあ、目新しいところはなく。

んで、今年一番刺激を受けたのが、梅田望夫というweb技術をメインにコンサルしているオッサンが書いた『web進化論』。ちくま新書の1冊ですが、これが、オレにとっての今年のナンバーワンですわ。
googleという起業のユニークな点の紹介にはじまって、amazonがもたらした市場の激変、オープンソースのこと…、知の秩序の再編成と富の再分配にまで言及した論考は、どれもこれもが新鮮で、とんでもなく刺激に満ちてましたわ。
で、この本に真っ先に反応したのが、作家の平野啓一郎。この2人が対談した『web人間論』は、ついさっき買いました。明日、読むかな。

ま、今年はこんなかんじ。来年も、いろいろと読んでます。

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