2006年3月14日火曜日

障害者雇用、悲喜交々

またまた知り合いの通販会社の話。

ここは誰でも知っている大手の通販会社なので、通産省や労働省からの指導や通達がちょくちょく来るところでもあるわけです。

で、最近、障害者を積極的に雇用してほしい、とのお達しが。もちろん、助成金付きですけど。

この通販会社は慈善事業ではなく営利を目的とした純然たる私企業なので、もちろん、健常者よりも能力の劣る障害者を雇用したいとは思っていません。健常者よりも能力のある障害者はたくさんいるだろうし、障害者を雇用することで企業の利益向上や売り上げ向上を図ることだって出来るのですが、この通販会社ではそこまでの意識は持てておらず、現状では、監督官庁からお達しが来たから、止むなし、というところです。

で、障害者を雇用しました。
契約社員です。月給は、税込・社会保険込みで超大手大卒初任給並み。つまり、一般社員と同レベルです。

雇用した障害者の方は、40代後半の女性で、以前に白内障を患ったことから、健常者よりも視野が狭くなり、障害者としての認定を受けたとのこと。たぶん、3級ですね。軽いです。パッと見、障害をお持ちだとはわかりません。視力0.1の人が裸眼でいるよりも、不自由度は軽いと思われます。でも、認定された障害者。

この人がね、仕事出来ないんですよ。

まず、PCが使えない。
この会社では、作業のほとんどを、PCを通して行なっています。受発注管理、顧客管理、法務…、すべてPCを使います。といっても、自前の簡単なシステムと、word、excelのみ。
このおばちゃん、以前にも同業種で働いていた経験があるらしく、わかるわかる!を連発するんですが、よくよく聞いてみると、生半可な知識だけを知っていて、実作業がまったく出来ない。結局のところ、wordもexcelも、現実には使えないわけです。でも、こんなやりかたあるやんなぁ〜、とか、聞きかじりの知識だけで、さも知ってるふうを装うから、始末に負えない…。

さらに、敬語を使わない。
誰に対しても、友だち感覚。お客さんでこの会社を訪れたオレに対してすら、初対面から、友だち感覚でタメ口ですから。この会社のこの部署では、おばちゃんが一応は一番年上なので、皆が彼女に対しては敬語で接しています。なのに、おばちゃんは、一番の新米にもかかわらず、タメ口。
しかも、誰かが話し込んでいるところに平気で割り込んできて、しょーもない話を割り込ませてきます。
要するに、社会常識がまったくない。

さらにさらに、仕事が覚えられない。
朝、社内外から郵便が、この部署にどさっと届きます。書留もあれば、社内便もあります。それらを宛先別に仕分けして、リストをつくり、おばちゃんが各人のデスクに持っていきます。
宛先人が外出していて不在の場合は、不在ボックスというのがあって、そこに入れておきます。外出先から帰ってきた人は、自分宛の郵便物があるかないかを必ずチェックしますから、そこに入れておけばわかる仕組みです。
書留や配達記録の郵便物は、手渡すときに、あらかじめ作成したリストに受け取りのハンコを押してもらいます。それが、とりあえずは彼女の仕事。バカでも出来る簡単な仕事ですね。
これが、出来ない。何度言っても、出来ない。
まず、お目当ての人がデスクにいなければ、どこにいった?と、部署中を駆けずりまわって、大騒ぎする。たった15人しかいない部署なんですけどね。外出してる人は、行き先ボードに外出先と帰社予定時間が書いてありますから、それを見ればわかることです。そこになにも書かれていないのなら、席を外しているだけのことでしょう。じきに戻ってきます。その、行き先ボードを見る、ということが、いつまでたっても出来ない。
書留や配達記録郵便はリストに受け取りのハンコを押してもらうのですが、リストを自分の机に置いたまま、書留や配達記録郵便だけを持ってきます。いつも、ハンコを押してもらうためのリストを一緒に持ってくるのを、忘れます。彼女の頭のなかでなにがどうこんがらがっているのかわかりませんが、逆に、社内便を手渡すときに、リストを一緒に持ってきて、受け取りのハンコをもらおうとします。
これ、1ヶ月が経っても、満足に出来ないんです。何度言っても、出来ない。

最初は、部署の日報を書いてもらおうとしました。でも、wordもexcelも使えないことが判明して、この仕事をお願いするのは断念。
次に、簡単な発注業務を電話で行なう仕事をしてもらおうとしたのですが、何度言ってもタメ口なので、これも断念。
そうやって消去法で消していって、これなら、とお願いした仕事が、毎朝到着する郵便物の仕分け。しかし、それすら、このざまです。

もうひとつ。
その部署から郵送する郵便物も、おばちゃんが管理します。
なにがしかの郵便物を出したい人は、社内便であれ普通郵便であれ、書留であれ配達記録であれ、おばちゃんにわたします。おばちゃんはそれらをリストにして、社内便、普通郵便、書留&配達記録、と、郵便の種類別に仕分けして、所定の箱に収めます。そして、夕方になれば、まとめて出しにいくわけです。ちなみに、書留や配達記録は大切なものなので、なくさないように、それらを仕分けした箱には鍵をかけておきます。夕方以降のぶんは日をまたぐので、紛失防止のためです。これだけの仕事。バカでも出来ますね。
まあ、到着した郵便物と同様のてんてこ舞いぶりをここでも発揮してくれていますが、それは、同様のことを繰り返し書くことになるだけなので、ここでは省きます。

こないだ、書留&配達記録を保管していた箱の鍵を、おばちゃんは紛失しました。
もう1本スペアがあるし、鍵をなくすのはダメだけれども、そういうことは誰しもあります。でもね、このおばちゃん、悪びれることも反省することも、ないんですよ。部署の全員が総出で探したんですが、おばちゃんだけは、「どこにいったんやろうねぇ」「不思議やねぇ」を連発して、ボケーッとしてます。

もう、こうなってくると、なんの仕事をお願いしたらいいんでしょうね。ここの部署の統轄者はオレの知り合いですが、頭を抱えています。

現在、郵便物の管理だけの仕事で、残業までしてるそうですよ。
そのくせに、日中、やることがあまりにもないもんだから、机の上でボケーッとしてます。まじで、なにをするでもなく、ボケーッとしてますから。ときどき、煙草を吸いに、喫煙ルームに行ってます。でも、なぜか残業してることも…。

こんなの、障害を云々する以前の、個人の能力の問題なんですが、相手が障害者ということで、上司も、統括者も、同僚も、誰も、彼女にはなにも言いません。文句も言いません。腫れ物に触るみたいにして、こうしてくださいね、ああしてくださいね、と、何度も何度もおなじことを繰り返しています。
そのたびに、おばちゃんは、そっか〜、そういってくれたらわかるわ、次からそうするわ〜!と、タメ口で返して、次もまたおなじ失敗を繰り返しています。

このおばちゃん、こないだ、初めての給料でヴィトンのバッグを買って、会社に持ってきて、みんなに自慢してたらしいです。

オレが懇意にしているべつの会社では、早くから障害者の雇用に力を入れているところがあります。言語障害と、軽い知的障害がある男性が、働いています。
その会社では、彼に、倉庫で荷物の積み込みの仕事をしてもらっています。この荷物はこっちのトラックに、あの荷物はこっちのトラックに、ってかんじで、積み込んでいく仕事です。一度にたくさんの荷物とトラックが来ますから、健常者の人でも、慣れないとパニックになるかもしれない量です。
彼も、ときどき、積み込む荷物とトラックを間違えることがあります。そのときは、もう、ガンガンに怒られてますね。健常者とおなじ扱いです。でも、ガンガンに怒られてきたおかげで、彼は、今では一人前の仕事をしています。今では、彼の下に、若い部下が2人ついています。
この会社では、障害者も健常者もなく、皆が笑い、泣き、苦楽をともにしています。

こうあるべきですね。

以前に、『五体不満足』という本がありました。きれいごとしか書いてないのでかなり嫌いな本ではあるのですが、まあ、いいことも書いてある本です。
高いところにあるものを取る場合、普通は踏み台を用意しなければとれません。踏み台がなければ、車椅子に乗ってる方であれ、健常者であれ、届かない場所にあるものは取れません。
車椅子に乗っている方でも、数字に強ければ財務の仕事が出来ます。健常者でも、味覚オンチであれば料理人にはなれません。
障害の有無も含めて、その人の出来ることが、能力ですよね。そして、職場というところは、その職場に適ったその人の能力を発揮する場所だし、そうした能力を発揮出来ない人を置いておく職場というのは、不健康きわまりないですね。

現状、障害者の雇用については、この2パターンを耳にします。
社会還元の意味合いから、やむなく障害者を雇用して会社の業績を悪化させているところ。もうひとつは、健常者とおなじ扱いで障害者を区別せず、適正に適った仕事を与えているところです。
そこにもうひとつ、健康や安全や環境がビジネスとして確立したことによって、各企業がその分野に積極的に力を入れはじめたように、障害者を雇用することがビジネスとして確立すれば、障害書を雇用することを商機と位置づけるような企業が出てくれば、上記のような摩擦は、なくなります。


ところで、泉谷しげるは、あまり知られていないけれども、障害者です。足をひきずってます。
でも、ライブじゃそれをネタにして、笑いまでとってますね。
そういうタフネスが、オレは好きです。




泉谷しげる / 『おー脳』

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