2005年12月23日金曜日

スポーツ草の根運動





20日、Jリーグの年間表彰式「2005 Jリーグアウォーズ」が開催されました。最優秀選手賞には、リーグ初制覇を成し遂げたガンバ大阪のエースストライカーにして今季得点王のアラウージョ選手が受賞しました。
その他、新人賞やベストイレブンなどの表彰に混じって、Join賞 (チェアマン特別賞) というものが、発表されました。受賞したのは、「『神達彩花ちゃんを救う会』の募金活動を支援したすべてのサポーター」です。

ご存知の方も多いと思いますが、生まれつき腸が機能しない重病を持ち、多臓器同時移植を受けるため渡米した茨城県水海道市の神達彩花ちゃんが、18日、マイアミ大学ジャクソン記念病院で手術を受け、無事成功したことが報じられました。

彩花ちゃんは出生後、腸の神経が未発達のため正常に機能しない「ヒルシュスプルング病類縁疾患」と診断され、出生2日目に緊急手術して以来、5回も手術を繰り返してきました。
担当医から、助かる道は臓器移植だけと宣告され、肝臓と小腸の多臓器移植手術を受けるため、ご両親とともに今月8日渡米していました。

彩花ちゃんのお父さんがJリーグ・鹿島アントラーズのサポーターだった関係で、同クラブが1000万円の寄付をしたほか、Jリーグの複数のクラブから寄付の申し出があり、その輪は、日本代表のサポーター・ウルトラスや他クラブのサポーターにまでひろまり、最終的には、渡航費や手術費など約1億 3000万円が集まりました。Jリーグのみならず、プロ野球の千葉ロッテマリーンズのファンのあいだでも、おなじような募金活動が展開されたと聞いてます。オレは、ウルトラスに加入しているので、この件では、頻繁にメールを往復させていました。

まず、こうした動きが、自発的に草の根の活動によってひろがったことは、特筆していいかと思います。
さまざまなスポーツの分野で、トップアスリートがチャリティや寄付によって社会に還元することは今やあたりまえに行なわれるようになってきましたが、ファンがこうした動きを見せたことは、これまでにはなかったことだと思います。
ファンは、これまで、お上が決定し、与えてくれたものを咀嚼する立場でしかありませんでした。それが、今や、自分たちで考え、自分たちの主張を口にし、それらを集約する組織を確立させるまでになりました。

サッカー界は、まだ比較的、モノを言うサポーターがたくさん集まっているように思います。
たとえば、日本代表監督の解任要求などは、ときどきマグマが噴火するように燃え上がってひろがっていくことがあります。
これは、とってもいいことです。
日本代表は、みんなのものなので、みんなの意見が届くのは、とてもいいことです。

思えば、
ドーハの悲劇で有名な当時の日本代表監督、ハンス・オフト氏が監督に就任する直前、日本のサッカー界はどん底にありました。
それまで、学閥による順送り人事でやってきた日本代表監督選考に、はっきりとノー!を突きつけたのが、当時のサポーターです。
当時、日本サッカー協会友の会の会費は年間で1万円。会員は約1000人。約1000万円の友の会会費収入が、日本代表の強化遠征費に充てられ、強化遠征費はこれ以外にはどこにもない状況でした。今みたいに、スポンサーなどついていなかったのです。あのとき、オレたちは、ノー!の意思をはっきりと伝えるために、会費の不払い運動を起こしたんですよ。結果、学閥順送り人事は取り消され、初めての外国人監督である、ハンス・オフト氏を迎えることが出来ました。

欧米では、監督のみならず、選手を獲得する際にも、ファンの声が反映されることがままあります。それがシステムとして確立しているチームやクラブだって、あります。
それに比べたら、日本のファンやサポーターはまだまだだけれども、今回のように、皆のあいだにひろまった連帯感が1人の命を救ったというケースは、まず聞いたことがありません。前例になって、今後も積み重なっていけばいいな、と、思ってます。

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