2005年12月25日日曜日

ルミナリエの夜





皆さん、イブを楽しんでますか!
オレの場合はイブといっても特段書くこともないので、書きそびれていたことを今のうちに…。


22日、ギリギリ駆け込みの最終日、ルミナリエに行ってきました。

と言っても、すでに2回目。神戸にも事務所があるので、毎年2回、多いときには3回行くんですけどね。

1回目は、1人で行きました。いっつもね、1回は1人で行くんです。この時期は毎年忙しくしてるんで、無理矢理にでも時間をつくって、ポケッとするために、1人になってルミナリエを歩きます。その年の1年を振り返ったりしてね。でも、今回はその話ではありません。

今回は、長田在住コリアンのオバァとウチナンチューのオバァを都合3人引き連れての、ルミナリエ見学ご一行様。オレ、ツアコンですわ。こっちの話。

全員、震災のときに知り合った方々。

震災のときは豊中に住んでいて、家んなかのものが全部ひっくり返りました。ガラス、陶器、CD、割れまくり。家のまえの地面が軽く割れたりもしていたけど、建物自体はビクともしてなかったので、姉歯設計事務所も木村建設も平成設計もヒューザーも総研も絡んでなかったってことです。今にして思えば♪  でも、活断層は真下を走ってましたが…。

まあ、そんなこんなで絨毯ごと丸めてガラクタ捨てちゃえば我が家は無事だったので、当日の遅くにやっと連絡のついた知り合い連中を迎えに、車を出して神戸に向かったのでした。
当時、神戸の外国人連中に知り合いが何人かいたので、彼らをピックアップ。彼らをピックアップするついでに、彼らの知り合いもピックアップ。ほいで、そのまた知り合いも…。
3、4日、連日のように神戸にピックアップに行って、なんやかんやで20人の外国人が、我が家で寝起きしてました。12ヶ国21人8言語が入り乱れて足の踏み場もないような生活でその年の冬を越したけれど、それはそれで楽しかったですな。

で、そのなかの1人、ウズベキスタン人の留学生が、長田の在日コリアンのオジィやオバァのデイケアみたいなことをしてたんですよ。ウズベキスタンと韓国は活発に交流があるから、その線からやと思うんですけどね。(←このあたりの事情、あいだに通訳の言語が入りすぎて、込み入ったことがわかりません (笑) いまだに)

それがきっかけで、オレ、長田のオジィやオバァと遊ぶことが多くなりました。
むかしっから熟女キラーの異名をいただいてきたオレは (笑) 、お年寄りが大好きなのです。だって、むかしのおもしろい話をいっぱいしてくれるもん。教科書に載ってないような話をね。

「朝鮮人は臭いからキライや!」
なんてことを、たとえばウチナンチューのオバァは平気で言ったりします。偏見の塊やけど、オバァが若いころからの実感として持ってるものなので、もはや改善不可能です。だって、そう思って50年とか60年とか生きてきたんやもん。こびりついてるし、染みついてるんやもん。今さらなにを言ってもムリってもんです。体験から抽出された実感に対して、言葉なんて、どんだけ重ねても無力です。

神戸の長田といえば、貧乏長屋が並んでいて、いろんな境遇の人がいて、みんなが協力して仲よく、かつがつその日をしのいできたイメージで見られがちです。でも、そんなことないですね。イメージ通りのこともあるし、そうじゃないこともいっぱいあります。もちろん、ひとつのイメージが全員に当てはまるものでもない。
戦争で儲けた人もいれば、戦争で大切な人を亡くした人もいるし、戦争で人を殺した人もいます。みんな、立場や背負ってる歴史によって、まちまちです。
それをね、ひとつひとつ知っていくことが、オレは、好きなんです。
長田、という、共通の括りではなくて、そこで生きてきた人が、名前のある個人が、なにを思ってなにを感じてなにを拠り所にしてきたのか、そういうことを、いっぱい教えてもらいました。

オレらはね、新聞や本や映画や音楽や演劇や絵や雑誌や写真から、いろんなことを学びます。
でも、そうやって身につけた知識は、薄っぺらいですね。
遠くの国の政治問題ほどキレイに苦悩出来る、
と、開高健は、インテリの痛点を刺すような至言を書き残してるけれど、ほんと、その通りです。
長田という、水はけの悪い安い土地に住みつくしかなった人が、安い革しか売ってもらえなくて安い靴しかつくれなかった人が、これでもかこれでもかと頭を押さえつけられて、なにかが間違ってるはずや!と感じて、そっから出てきたモノの考えかたというのは、やっぱり、迫力があります。
新聞や本や映画や音楽や演劇や絵や雑誌や写真から得た知識なんかでは絶対に太刀打ち出来ない、凄みがあります。
ブッシュや小泉や石原がなにか言ってるのが、寝言みたいにしか聞こえないです。

そういう話をいっぱい聞かせてもらえるのが楽しみで、何回も何回も長田に遊びにいってます。

もちろんね、そんなカタい話ばっかりじゃない。
白木家具の汚れを落とすには、布に大根おろしをつけながら、こするように磨くと手あかなんかの黒ずんだ汚れがきれいに落ちる、とか。
咽喉が痛くて寒気がするときなんかは、梅干しを2〜3個、弱火で焦げないようによく焼いて、熱いお茶を注いで飲むと、汗が出て寒気も咽喉の痛みも治る、とか。
どこまで真なんかわからんそういうことをね、もう、惜しみなく教えてくれます。

そういう人たちとね、毎年、ルミナリエに行くんです。
ワーワーキャーキャー言いながらね。
もうね、震災から10年経ってるし、むかしとちがって、しょっちゅう会うわけじゃないです。恋愛の初期みたいにして盛り上がる時期はとうに過ぎてて、ワンクールに1回会う、みたいなかんじ。忙しさにかまけて。
だから、ルミナリエみたいなイベントがあると、すごく助かる。

仮設に入ってらっしゃったときに、亡くなったオジィやオバァも、たくさんいます。
孤独死もあったし、生きる気力をなくされた人も、たくさんいます。
櫛の歯が抜けるみたいにね、毎年、誰かが天に召されていきます。
だから、湿っぽい話になるときもある。むかしはな、みたいな話になるときもあります。
でもね、すぐにワーワーキャーキャー言ってる。今年のモニュメントは出来がいいとか悪いとか、あとで中華食べにいきたいとか、83歳のオバァはオレに結婚迫ってくるしね。

今年は、通りを抜けた広場のところで、ソウルフラワーの中川クンとばったり会いました。あの人混みのなかで出会うのは奇跡みたいなもんやけど。
中川クン、1人で来てたんで、こっちに合流。

オバァ連中、カニ食べたいなぁ、カニ食べさせてーなぁ!
オレ、この寒いときにカニなんか食べたら、身体冷えて凍死するでぇ。
中川クン、ほんまや、これまでさんざん美味いもん食ってきたんやから、居酒屋でじゅーぶんや。カネももったいないわ。

で、最後は元町のやっすーい、居酒屋に行ったのでした。中川クンの行きつけ。




Japonesian Balls Foundation / 『Another Girl, Another Planet』

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