2007年2月16日金曜日

東国原宮崎県新知事の語り


東国原宮崎県新知事の所信表明演説を、見ました。
テレビで長い時間をかけて何度も報道されてましたな。連日の報道ぶりだけをとっても、宮崎県の宣伝効果って、広報費換算したら1億円を越えてると思いますよ。

選挙のころは、オレ、留守にしてたので、彼が知事選をどう戦ったのか、詳細を全然知りません。
全然知らないけれども、何度もテレビで報道されるのを見て、宮崎県のサイトも見てみて(就任時の記者会見の録画動画がノーカットでアップされてます)、大体のところがわかってきました。

政治のプロが信用も信頼もされなくなって、しがらみのない無党派を支持した、ということはあるんでしょう。
その追い風はあっただろうけれども、きっと、本質はそんなところになかったろうと思います。

オレは、政治の本質は、語り、なのだと思っています。そうあらねばならないと、思っています。
政治家は、語りによって、国民に、目指すところを説き、導き、諭さねばなりません。
リンカーンが、そうでした。
ケネディが、そうでした。
ヒットラーが、そうでした。
ゴルバチョフがそうだったし、サッチャーがそうだったし、フィデル・カストロがそうだし、クリントンですら、そうでした。
日本にだって、板垣退助のような人がいました。

語りがね、そのまんま東の語りが、すっごくいいんですよ。
メディア慣れしているというのは、もちろんあります。それこそ彼のスキルのひとつでしょうが、スキルだけじゃなくて、熱意というか、必死さというか、人柄というか、そういうものがね、ぐんぐん伝わってきます。胸に突き刺さってきますね。

特に変わったことや目新しいことを言っているわけでないです。今日日、どんなに保守的な政治家であっても改革を旗印に掲げるわけだから、彼の言っていることに、目新しいことなんて、ひとっつもない。
ひとっつもないけれども、すごく伝わってきます。
こんなにも言葉が伝わってくる政治家って、まずいなかったですね。

本気の度合いが違う、ということはあると思います。
いや、どんな政治家だって本気だろうけれども、本気で改革してやろうとする熱意が、他の追随を許さないんだと思います。
それと、熱意の純粋さ。
宮崎をよくしたい、という以外の野心が、彼には見えません。その純粋さが、彼の語りからは伝わってきます。

政治に染まっていない、というのも、語りにおいて、プラスに作用しています。
彼は、役人言葉、政治屋言葉を使わないですね。オレたちが普段使っている言葉を使いますね。宮崎弁を使うということは、そういうことの一環でもあるけれども、言葉遣いがオレたちと同じかオレたちの延長線上にある言葉です。
安倍総理がどれだけカタカナ・新語を使おうとも、そこに新しさも説得力も感じないのは、彼が、政治屋の文脈、役人言葉のなかで、語るからです。小泉前総理は、その点、まだマシだったけれども。

なにもオレたちと同じ言葉遣いをする必要はないけれども、同じ言葉を使うということは、オレたちと同じ目線でモノを見ている、と、感じるもんです。
政治家なんだから、もっと大所高所(←政治屋や役人の好きな言葉!)から見てくれたらいいんだけれども、少しはオレたちと同じ目線でも見てくれよ、という、悲鳴みたいなものが、今回、新知事を支持した票の正体でしょう。

政治家は、なにも語りだけではやっていけません。清濁併せ飲む度量も必要です。でも、理念が、語りが説得力を持たない政治屋は、それ以前に失格なんですよね。
その意味で、今の日本の政治家なんて、ほとんどが失格です。
票を入れたい人がいない、というのは、まさにそういうこと。
そんななかで、東国原新知事は、説得力のある語りで、理念を示しました。
久しぶりに、楽しみな人が出てきたな、という印象ですわ。

ただ、
知事公舎の扱いを、コストの面だけで考えるのはどうかな、と、個人的にはそこだけ異論がありました。
どんな政治家でもコストの圧縮は口にするし、改革派の政治家だったら、知事公舎が立派すぎるから売れ!くらいのことは言います。そのほうが受けもいいでしょうから。
でもなあ、
知事公舎には、県外や国外からお客も招くわけですよ。
そこがしょぼかったら、県がしょぼく見られちゃうし、首長はそれなりの格のある環境を用意してあげてないと、と思うんですけどね。
首長が立派じゃなかったから、そんなに贅沢な公舎なんて要らないってことに、今はなっちゃうんだろうけれども、長い目で見たら、贅沢な公舎もハイヤーもそれなりの費用対効果を得られる資源に出来るはずだしね。
むかし、サッチャーが、どこか国に置いてある大使館に立ち寄った際、応接に飾ってあるしょぼい絵画を、名画に変えさせたのでした。イギリスがなめられる、と言って。そういうことも大切なのだと、オレは思います。



ani difranco / 32 Fravers

0 件のコメント: