2007年2月19日月曜日

やっぱり午が合うんでっしゃろな


織田作之助の『夫婦善哉』、今は、復刻版が出てるみたいですね。
amazonで調べてみたら、講談社文芸文庫から出てました。これ、長らく絶版でしたから、手軽に読めるようになって喜ばしいかぎり。

オレも、今、手元にないし…。それにしても、必要ないときには目につく場所にあるのに、肝心なときにどこにあるのかわからないというのは、どういうことなんでしょうかね。。。

さて、『夫婦善哉』。
大阪は道修町の化粧品問屋の跡取り息子、柳吉は、31歳の妻子持ちですわ。お人よしのボンボンで、カネさえあれば飲んでまわる放蕩息子。船場のアホぼんの典型ですな。
一方、曾根崎新地の芸者、蝶子は、小学校を出てからこっち、あちこち女中奉公に出て、17歳のとき、自分で希望して芸者になる。陽気で声自慢、座持ちが上手かったので、たちまち売れっ子になるわけです。
その蝶子が、柳吉に、ぞっこんホの字になるんですな。
惚れたら負けよ、あばたもえくぼとは上手いこと言ったもんで、柳吉の吃りにも誠実さを感じてしまう始末で。まあ、蝶子の押しの一手で、ふたりは結婚しちゃうんですけどね。
そんなこともあり家を勘当された柳吉を、蝶子はヤトナ(芸も見せる出張仲居)までして、支えるんです。支えるんですが、その間、柳吉は安カフェへ出かけて、女給を口説いたりしてます。
おまけに、柳吉くん、いろんな商売に手を出すんですが、どれも長続きせずで。

当時の大阪の生き生きとした町人文化の風俗が丹念に描かれていて、風俗小説として秀逸なんですが、恋愛小説としても一級品でしてね、蝶子のだめんずウォーカーぶりもさることながら、ほら、男女のことって、他人には窺い知れないもんがあるじゃないですか。その、しみじみとした優しさがね、ラストの大阪はミナミの法善寺通りにある甘味処でぜんざいを食べるシーンに集約されてるんですわ。

この小説、オレ、大好きでしてね。
人間観察が素晴らしくて、理屈で成り立ってないところが、心にじわっと来るんですわ。
この甘味処は、今でも営業してるんで、稀に行きます。

で、この物語の続編がある、というのは、かねてより噂では聞いていたんですが、最近、鹿児島で見つかったらしいです。
題は、『続 夫婦善哉』。
柳吉が小倉競馬で稼いだ金を元手にして、夫婦は、大阪から別府に移住するところから、続編ははじまるんやそうです。相変わらずのアンポンタンぶりが、笑えますが。。
で、別府の温泉客を狙って剃刀店を開き、繁盛する。
でも、戦争による金属品統制で商品の仕入れが思うように出来なくなり、商売替えを決意。大阪へ戻るんですが、戻る船のなかで、船員に夫婦円満を冷やかされるんですわ。
そこで、蝶子が、こう言うんです。
「なに言うたはりまんねん。いつも喧嘩ばかししてまんねんで。でも、やっぱり午(ウマ)が合うんでっしゃろな」
と。

理屈がすっ飛んで、最後の暴力的な結論。
「午が合うんでっしゃろな」。

そうやんな。
男女って、結局のところ、そこに尽きるな、と、この話を聞いて、強く強く思いましたわ。
概略をすでに聞きかじってしまいましたが、ぜひ、ちゃんと読みたいですな。
続編、刊行されるんやろか?

そんなことを思いながら、今日のお昼は、織田作之助が『夫婦善哉』の構想を練ったミナミの自由軒で名物カレーを食べてました。黄身なしで(笑)

法善寺の夫婦善哉

自由軒

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