2006年8月9日水曜日

フジロック 7月30日フィッシュマンズ編





オレにとって、フィッシュマンズは、RCやじゃがたらやブルーハーツなんかとともに、とても特別なバンドであり続けています。
mixiでも、最初に入ったコミュは、フィッシュマンズ関係だったりします。

ほんとにね、あるいち時期、フィッシュマンズだけを聴いてればいい、という時期が、オレにはありました。

言葉ではなく、音そのものだけでなにかを伝えられる、数少ないバンドでしたね。
なにか特別なことがあるわけではない、ごく普通の日常を、それでもオレたちは、えんやこらと退屈をうっちゃって、いや、退屈こそを友として生きていかねばなりません。そんなとき、傍らにフィッシュマンズの音楽があれば、どれほど勇気づけられたことか。

リリシズムの塊のような佐藤クンの声が、あの、世界のどこに出しても自慢出来るタフなリズム隊の奏でるビートに乗っかると、それだけでマジックでした。風景が、歪んで見えました。まるで、白昼夢を見ているようでしたね。

どこにもリアリティなんてなかったけれども、逆に、だからこそ、引いても押しても手応えのあるリアルなものとして、オレたちの今の気分をリアルに表現したものとして、この音はオレの味方の音なんだとはっきりと実感出来る音として、いつもいつも、傍にありました。

だからこそね、佐藤クンがこの世からいなくなったときの喪失感といったら、デカかったですよ。

デカかったけれども、そのあと、UAが、レゲエのアルバムを発表し、そのなかで佐藤クンを送るシンプルな歌を収録したとき、それを聴いたとき、涙が止まりませんでした。
それは、悲しみの涙ではなくて、佐藤クンが蒔いた種子が、確実に育っていることを実感したからです。
篠原ともえが、テレビでフィッシュマンズのカバーを歌ってました。それを観たときも、ああ、こんなところにまで佐藤クンの声は届いていたんだなあ、と、本当に嬉しくて、涙が止まらなかったんですよ。

80年代、ミュートビートが日本に持ち込んだダブ・レゲエは、彼のブルーズがそのまま表現されたような、重くヘビーなダブでした。
それを、佐藤クンとフィッシュマンズが、時代の軽さも重さも引き受けるかたちで、ひとつの結晶をつくりあげました。『宇宙日本世田谷』や『空中キャンプ』、『ロング・シーズン』なんて、とんでもなかったですよね。それ以前のアルバムも、愛らしくてとても好きですけど。

亡くなってからかな、亡くなるまえかな、ライブアルバム『男達の別れ』だっけ? あれが出ましたよね。もう、何千回となく聴いたアルバムですが、あれを聴くと、ミュートビートがロックバンドでしかありえなかったように、フィッシュマンズもまた、本質的にはロックバンドだったんだなぁ、と、オレは改めて実感しました。佐藤クンがね、力強いんですよね。

99年に佐藤クンが亡くなってから、フィッシュマンズの人気は衰えるどころか、彼の生前よりも人気が高まっているように思います。
トリビュート盤(UAだけが燦然と輝いていました)が出て、ベスト盤&レアトラック集が出て、有志がボーカルをつとめるかたちで再結成までされました。昨年のライジング・サンが初お披露目だったのかな。
韓国でもフィッシュマンズ的組合が催され、この春は映画まで上映されちゃいましたね。
そのどれも実際に見ていないオレとしては(思えば、佐藤クンが歌っていたときすら、オレにはライブに行くチャンスすらなかったんです)、今回のフジでフィッシュマンズがステージに上がる、と聞いただけで、それこそが、今回のフジのマスト・アイテムとなりました。はっきりいって、それだけを観れば、あとはなにもいらない!ってくらいの気分でしたよ。

そのフィッシュマンズが、いよいよステージに上がります。
オレとatricotさん、ジャイ子さんは、少し端だけれども、最前列に陣取って☆

メンバーの先頭を切って、茂木クンが登場。二本指を額にかざして、なかなかかっこいいです☆ 彼は、スカパラに加入してから、男前度がグンと上がりましたね。オレ、とっても好きですよ。
続いて、ベースの柏原クン、ギターはヒックスヴィルから小暮クン、バイオリン、ホンジ!
横で、atricotさんが、すでに泣いてます。人間って、こんなに涙が吹き出るんだ!って見てたんですけど、オレも、なんだか涙が込み上げてきてしょうがありません。悲しいわけでもなんでもないのに、涙って、出るんですよね。この面子がステージに上がったというその事実を目撃しただけで、心がざわついてます。

あのね、ボーカリストが代わる代わる次々に出てきてフィッシュマンズのナンバーを歌ったんですけれども、正直いって、覚えてないんです。

キセルが出てきた、クラムボンの原田郁子ちゃんが出てきた、ポコペンが力強く『シーズン』を歌った、ボノボも出てきた。ボノボは『感謝(驚)』を歌ってたのかな。『ウェザー・レポート』を歌ったのは誰だったかな? 『ナイト・クルージング』は誰が歌ったっけな? 最後はハナレグミの永積クンだった。
なんかね、断片的に覚えてるんですが、誰がなにを歌ったのか、よく覚えてないんです。
UAがね、出てきました。
前日、見逃して悔しい思いをしたんだけれども、菊池成孔&UAでステージがありました。でもフィッシュマンズのステージとは違う日だし、こっちにはUAは出ないんだろうな、と、勝手に思ってたんです。
その、UAが出てきたとき、オレ、涙が出ましたよ。
オレね、フィッシュマンズをその本質までもっとも理解しているのは、UAだと思ってます。UAも佐藤クンも、おそらく、神的存在や宇宙的存在物と交信出来る術を持っています。この2人は、とてもよく似ていますよね。トリビュート盤で彼女が歌った『頼りない天使』は、他のアーティストが原曲をなぞることに終始していたなかにあって、これだけは完全に原曲が破壊されていました。UAの楽曲になってました。UAが佐藤クンの資質にもっとも近いからこそ、彼女は、佐藤クンの楽曲をなぞるようなことせずにすんだのだと、オレは思っています。

そのUAが、なんと、『ウォーキン・イン・ザ・リズム』を歌ったのでした☆
あのね、フィッシュマンズの『ウォーキン・イン・ザ・リズム』じゃないですよ。完全にね、UAの『ウォーキン・イン・ザ・リズム』になってしまってます。
こんなのね、言葉に出来ない。なにか、神々しささえ感じました。生涯でも何回観れるかわからないようなレベルの、とんでもない代物でした。
隣で、atricotさんが泣いてました。
わかる。
勝手に涙が出るんです。
踊ることも、歌うことも、なにも出来なかったですよ。ただただ、そこに立ち尽くして、聴いて、眺めてました。
ほんとにね、とんでもないものを見ましたよ。どっかに連れていかれるんじゃないかと思うくらいに、すごい感覚に襲われました。

なあ、atricotさんよ、あなたはUAになれ! UAがUAであるように、UAが必死でどこまでもUAであろうとしているように、あなたはatricotであれ! 必死になってatricotとして生きなさい。 それが、UAになるってことだ。

今日こそ最後まで書ききれるかと思いましたが、なんと、フィッシュマンズだけで終わっちゃいました。
明日、いよいよ完結編です(たぶん…)

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