2006年8月18日金曜日

関野さんの「新グレート・ジャーニー」を見る


少しまえに、関野吉晴の『新グレートジャーニー 日本人の来た道 北方ルート編』が放映されました。これ、録画していたので、今日観たんですよね。

関野さんとは、最初、オレがインドを旅していたときに、ヒンドゥの聖地バラナシで出会って、一緒にガンジス川で泳いでました。
その後数年して、南米のペルーで暮らしていたとき、彼とばったり再会するんですよね。アンデスの山間の村のチャイ屋でぼけっとしてたら、自転車でアンデス越えを敢行中の関野さんとばったり(笑)
彼は、ペルーの山男のあいだではかなりの有名人でして、その頃オレもペルーの山男たちと交流がありましたから、そんな縁で、それ以来、仲よくしてます。

といっても、こっちは旅人、しかも、今は現役じゃない。
一方、関野さんは、現役の、しかも冒険家。

格が違いすぎるんですけど、なんだかんだで気があって、今でも電話で喋ったりする程度には付き合いのある仲です。今回の番組の旅も、事前に聞かされてました。

元・旅人としてはね、旅ばっかりしてる関野さんのことがそれほど羨ましいわけではないんですけれども、ときどきね、羨ましくもなります。

山に登ったり、砂漠を横断したり…、しんどいから今さらそんなことはしたくないんですけれども、でもね、あの、死と隣り合わせになって生き延びることだけに集中出来る環境に身を置いたときの高揚感というのはね、日常生活では絶対に味わえません。

日常の生活に忙殺されていると、ときどきですけれども、そういう刃を抜きたくなるときがあります。
男は、みんなあるんじゃないか。

旅は、とどのつまり、自分の内面を旅することにほかならないんですね。
でも、自分の内面の奥底なんて、覗いてみたところで、そんなところは空虚に決まってます。
だから、目的のない旅をしたら、えらいことになりますよ。
オレは、自分の体験から、そのことをよく知ってます。
でも、
関野さんみたいに、具体的な目的を持った旅なら、またしたいなあ、と、思います。

日本人がやって来た道を辿ることで、自らのルーツを探す…。
そういう旅には、当然のことながら、新しい発見があります。自分があたりまえだと思っていたことが、そうじゃないとか。あるいは、自分がいかに日本のことを知らないか、とか。

関野さんの旅も、そういう旅になってましたね。

サハリンで、残留した日本人や韓国人と出会うことで、そこがかつては日本の領土であり、その後、彼らが辛酸を舐めるような体験をしてきたことや、歴史の闇に葬り去られてきた惨劇を、リアルに知ることになります。

かつてモンゴルで出会った少女は、交通事故で死んでしまっていました。

マイナス70度の極寒の地で、我々の祖先は、野生の羊を狩ることで生活をしていました。

そして、
厳しい自然と共に生き、つらい状況で暮らしている人こそ、関野さんをとても優しく迎えてくれます。一番しんどい状況にいる人が、一番優しい。
そのことに触れただけでも、関野さんのこの旅を見てよかったなあ、と思いました。

いいなあ、関野さん。
旅ばっかりして。
だいたい、グレートジャーニーで人類のルーツを辿る旅を10年がかりでやって、その後はご家族と一緒に日常生活を送るって言ってたくせに、その舌の根も乾かないうちに、この旅ですよ。

この人は、もう、絶対に旅をやめるつもりないんでしょうね。
旅をしてるときって、早く帰りたいなって思うことがあるんですよ。
でも、そうやって帰ってきたとき、空港に着いて、家に向かう車のなかで、すでに次の旅への渇望が生まれてる…、そういうもんだし、そういう人種なんですよ、関野さんは。

彼の姿を見ていると、フォークシンガーの友部正人が、オレにはとてもだぶって見えます。
彼もまた、旅人です。
歌うことで、旅を続けている旅人です。




友部正人 / 一本道

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