2007年10月8日月曜日

広告屋の心意気


最近、キミの仕事は広告屋というよりもコンサルタントに近いね、と、言われて、特に意識したことがなかったのですが、たしかにそうやな、と、強く思いました。

というか、ずーっと、そういうふうにして仕事をしているんですが、たしかに、広告屋さんというよりも、コンサルタントのほうが実情に近いのかも知れません。
ただ、いわゆるコンサルタント業にいいイメージを持っていないので(あ、マイミクのかず@プレグルさんはべつです。彼を見て、初めて、コンサルタントにもまともな人がいるんだなあ、と思いましたから)、そう名乗るのには、すごく抵抗がありますけれどもね。。。

もともとオレは、リクルートの下請けで、求人広告からキャリアをスタートさせた人間です。
当時は、大学の新卒向けに、電話帳みたいな求人誌があったのですよ。それが10冊くらいですな、卒業予定の学生の家に、ドーンと送られてくるんです。A4サイズの雑誌で、見開きの2ページでひとつの企業の広告が載ってます。
今のTOWN WORKSみたいな求人広告じゃなくて、もっともっと本格的なやつ。

これね、掲載料が最低で80万円ほどします。オレは今のTOWNWORKSの広告掲載料は全然知らないけれども、まさかそんなベラボーな値段にはなっていないはずです。
ちょっとした企業だと4ページや8ページなんてボリュームで掲載するし、エリア別になっている雑誌だし、月刊だかから、いろんなエリアに毎月掲載するとなると、数百万円、数千万円はあっというまにいってしまいます。
なんでそんなベラボーな掲載料になっているかというと、広告をつくって載せるだけじゃなくて、そこから、その企業が求めている学生を採用するまでのすべてにかかわっていくので、そういう値段になってます。
で、一人でも優秀な学生が採用出来たら、そいつが将来的に会社にもたらしてくれる利益は何億なんてことにもなるので、社員が4人しかいないような会社でも、数千万円出してくれる会社もあります。広告代としてではなく、採用事業であり、会社を飛躍させるための先行投資でもあるわけです。

だから、面接の現場にも立ち会うし、誰にどのタイミングで内定を出すのか、なんてことも、戦略を立ててやってました。

当時のオレは20歳だったのですが、面接にやって来る卒業予定の学生さんは、22歳とか23歳とかですから、面接している側のオレのほうが年が若い、なんていう頓珍漢なことにもなってました(笑)
22歳の学生の合否が20歳の若造に決められてるって、逆の立場だったら、ものすごく腹が立ちますな(笑)

ま、それはいいんですが、商品広告ではなくて、求人広告をやっていてよかったなあ、と思うことがあります。
商品広告だとね、お会いする人は、営業本部長であったり、営業企画部長であったり、商品開発部長だったりします。つまり、商品にかかわる責任者までですね。どんなに頑張っても、そこまでです。ちっこい会社はべつですが。

でも、求人広告の場合は、通常の窓口は総務ですが、人材確保というのは、どんな企業でも最重要事項だし、人材の確保こそが会社の将来を左右すると考える経営者は多いので、場合によっては、経営のトップにお会いすることが出来るのですね。
20歳だったオレでも、やりかたによれば、経団連に名前を連ねて、ばんばんテレビに出ているような企業のトップや、話を聞こうと思ったら講演会に行って高いお金を払わなければならないようなトップ、うんざりするほどアポを取りまくらなければあってくれないようなトップに、お会いすることが出来たのですね。

広告というのは、広告を打つことによって、現状を打破する行為です。
この商品がなかなか売れない→広告を売って商品の売り上げを伸ばしたい。
カンタンに言えば、そういうことです。
なので、その会社の課題はどこにあって、その課題をクリアするためにはどういう広告をつくり、どういう媒体に載せればいいのか、ということを考えます。
それらをすべて考えて、セットにして提案するので、そもそもが、どうしたって経営的な視点に立たざるを得ません。
課題は、商品以外のところにあることだって、大いにあるのだから。
でも、商品広告という切り口でお客さんとかかわった場合、商品に関係する部門の垣根を越えていくのは、理屈のうえではあり得ても、現実の問題として、ちょっと難しいですね。

でも、人材採用は、経営に直結している総務の管轄する事業なので、その気になりさえすれば、経営トップまで行けます。
商品を紹介するパンフに企業トップの挨拶文なんて掲載されないけれども、採用向けの会社案内には、必ず企業トップの挨拶文が掲載されます。それだけ、経営トップに直結していることがらだってことです。

そのむかし、リクルートでお世話になったオレの先輩は、伝説になってました。
あのダイエーの店舗を徹底的にまわって研究して、ダイエーが抱えている課題を徹底的に洗い出して、独自でダイエーの経営戦略を立てて、ダイエーにプレゼンしたんですね。ダイエーの経営戦略をたった一人で立てたってだけでもすごいですけど、そのプレゼンがあんまりにもすごいので、そのまま中内会長にまで話が行ってですな、中内会長をして、彼ほどダイエーのことを考えてくれる人間は、ダイエー内部にはいない!と言わしめ、数十億円の受注をとって、ダイエーの採用担当部長の名刺までつくってもらって、ダイエー社内に机まで用意してもらってましたな。もちろん、リクルートの社員なので、ダイエーから給料なんて出ませんが、ダイエーの新卒採用事業の責任者としての権限を与えられてました。


さすがにオレにそこまでのことは出来ないけれども、今やってる仕事がね、ちょっとそれに似てるなあ、と思ってね。もちろん、スケールもなにもかも、違いますけど。

ある商品の認知度を高めて売れる環境をつくりたいから、そのための広告戦略を立ててくれ、という仕事でした。
簡単にいえば、予算に応じて、広告を掲載する媒体を決め、そのための広告をつくることで、オレは儲けさせてもらう、という仕事。
そもそもが、その商品は、当初の見込みよりも売れ行きが伸び悩んでいて、その会社の見立てでは、商品の認知度が足らんのではないか、と。で、広告を出したい、と。

ところが、です。
いろいろとその会社とかかわっていくうちに、はたして商品の認知度がないからそれが売れないのか、そうではないのではないか?という疑問を、オレは持つに至りました。
もちろん認知度はないに等しいのだけれども、それよりも、たとえば注文が入ってからお客さんの手元に届くまでの時間がかかりすぎる、小売店との関係がよくないのか、店頭で目立つところに置いてもらってない、小売店の店員に商品の特性を正しく把握してもらっていない…、などなど、商品を認知させることもさることながら、それ以外にもたくさん問題を抱えていることが、調べた結果、わかってきました。

これは、商品広告に予算を割くよりも、その資金を人材採用にまわして、小売店とコミュニケーションがきちんととれる人材、流通を管理出来る人材、流通のスリム化をシステムとして構築出来る人材を採用するほうがいいのではないか、というふうに、オレは結論を出したのでした。

で、そうしたことを軸にしたプレゼンテーションを再度行なって、全面的に企画を呑んでもらい、当初、オレのところに依頼があったのは商品広告をどうするかというものだったのが、人材採用事業に切り替わってしまいました。会社としては、コペルニクス的な転換だったみたいですけどね。でも、信用してもらった!

商品広告用に確保されていた予算よりも、人材採用にかかるコストが少なくてすむ結果になってしまい、結果、オレの儲けも縮小されてしまうことになり、自分で自分の首を絞める結果にもなってしまったのですが(笑)、まあ、それは仕方ありません…。次回、いい人材が採れたときに、今度は商品広告でがっぽり儲けさせてもらう、ということで(笑)

そこで言われたのが、日記の冒頭にある、広告屋というよりも、コンサルタントみたいやなあ、と。
ちょっと、嬉しかったですね。
オレは、ご用聞き営業なんてまっぴらゴメンで、自分で提案して、仕事がないところから仕事を生み出していきたい人間なので、そういうふうに言われたときは、ほんとね、ちょっと嬉しかったんですよ。
世間的には、それはコンサルタントというのかもしれないけれども、オレにとっては、それは、広告の一環なんですね。広告屋が、広告の切り口で、ここまでお客さんに貢献出来るんだよ、というのがね、広告屋のオレの、心意気ですから。

最初に採用広告に携わったおかげで、そこまでのことが出来るということを知ったし、逆に、そうではなくて、ただ広告をつくるだけの仕事なのだったら、オレは、ここまで広告の仕事にのめり込んでいなかっただろうとも思うのですよ。

おかげで、今度はその会社の人材採用事業をつくりあげていかないとダメで、今回の提案が実を結ぶも枯れるも、これからのやりかたにかかっているし、その会社の意識改革も必要になってくるので、大変ではあります。大変ではあるけれども、頑張ってやってやろうと思っているのですよ☆



えーっと、「心意気」で画像検索してみたら、なぜか、トコロテンが引っ掛かってくれました(笑)

で、「心意気」というと、ファイヤー!とかしか思いつかないオレは、やはり、発想が相当に貧困なんでしょうか?(笑)

本日の1枚:
『Let's Groove』
Earth Wind & Fire

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