2007年10月14日日曜日

半刈りの人、未来都市をつくる



東京出張中、森美術館に榎忠さんの作品が出品されていることを知り、間隙を縫って行ってきたのでした。
ちなみに、初ヒルズ☆

エノチューさん、ちゃんとインビテーション・カードを送ってこい!っつーの!って思ったんだけれども、エノチューさんの独演会じゃなくて、『六本木クロッシング2007 未来への躍動』ってタイトルで、30人以上のアーティストが一挙紹介されているイベントなのでした。

四谷シモンとか飴屋法水、エンライトメントなんかも出品されていたようですが、オレが関心あるのはエノチューさんだけ! はい、エノチューさんだけ見てきました。ご本人、いなかったけれども、相変わらず、オリジナルの極北のような異彩を放っておりました。

左の画像が、今回の出品作品です。写真、撮らせてくれなかったから、サイトから拾ってきましたけれども。

ステンレスから鉄から銅から、とにかく金属工場の廃物を片っ端から拾ってきて、ネジやらボルトやらパイプやら歯車やらシャフトやらなにやらの部品やらを旋盤で徹底的に磨いてね、ぜーんぶ男根みたいに屹立させて、未来都市を現出させてますわ~。部品、1万個を超えてるらしいですけどね。
これ、この5、6年くらい、ずーっと連作で発表してはりますな。
でも、今回のが、一番デカい! そのデカさだけで、凄みが倍増してます☆

摩天楼じゃないけどさ、20世紀にオレたちが思い浮かべた未来都市って、それこそ、無数の塔が競って天空に伸びていくような風景じゃないですか。それがね、直径5メートルの円形の台のうえにしつらえられているのですよ。暗闇のなかに一条の光が射して、これでもか!と磨き抜かれた金属の塔たちが、鈍く光るんですわ。

金属部品って美しいやん。形態美や機能美。廃棄され、社会の隅に隠された部品を集めて光を当てたら、どれだけざわめきが起こるやろか…。

エノチューさんはそう言ってるらしいのだけれども(パンフに書いてあった)、そうそう!ざわざわするのよ~。これは、『ガッチャマン』とか『宇宙戦艦ヤマト』とかを見てきた男の子たちに共通の感覚ではなかろうか?
はっきりいって、『AKIRA』よりも『鉄コン筋クリート』よりも『20世紀少年』よりも『ブレードランナー』よりも、圧倒的に未来ですな。

榎忠ことエノチューさんはですね、どこで知り合ったのかはもはや覚えていないけれども、とにかく、いつもいつも、あっと驚くようなことをやってくれる人ですわ。
現代美術でこれほど実力と評価の差が大きい人も珍しいくらいの人ですが、彼の影響を受けてない人っていないんじゃないか、ってくらいに、現代美術の地下水脈を流れ続けている人です。村上隆だって大竹伸朗だって、エノチューさんの影響は絶対に受けてるし。

ハンガリーやから「半刈り」やろ!ってことで、右半身の体毛すべてを剃って、ハンガリーに行った人ですから(笑) 入国に際して、思いっきり困難を極めたらしいですが(笑)
そんときの画像が、右の画像☆

2000年に彼が行なった反戦運動『PLAY STATION』は、とんでもなかったです。
まず、米軍と旧ソ連軍が使ったマシンガンの外形を忠実に再現してですな、型をつくって、溶鉄を流し込んで、そっくりなのを100丁つくるんですわ。中は詰まってるから弾を込めることも発射することも出来ないけれども、とにかく、外形は、本物そっくり☆
そいつをですね、老若男女いろんな人が集まって、それぞれ1丁ずつ手に持ってね、展示会場からとあるバーまで練り歩くんです。神戸で行なわれたんですけどね。
異様でしたよ。セーラー服の婦女子さんがマシンガン担いでるわ、スーツ着たサラリーマンもマシンガン担いでるわ、オジィやオバァも担いでるわ、談笑しながら担いでるわ…。平和な街に突如出現したマシンガン軍団ですからね。
神戸は山口組の本拠地でもあるし、なんも知らない人が110番する可能性もあるし、本物の銃を持った人を挑発する危険だって孕んでいるし、参加者に危険な人物が紛れ込んでる可能性だってあるし、しかも、事前に市や警察に連絡することなく行なわれたので、それはそれはものすごい緊張感がありました。

これはユーゴ紛争が起こったころに、エノチューさんなりの反戦表明として行なわれたものでした。
行進という、基本的には安全な行為であるはずのものなのに、なにが起こるかをまったく予測出来ないという事実がね、現実を覆い隠している観念の被膜をはぎとって、オレたちに生の実感を取り戻させる試みでした。
酒を飲みながらテレビのブラウン管に映し出されるユーゴ紛争の画面を見て、戦争は恐ろしい、日本は平和でよかったと思っているオレたちを、ほんの少しだけ戦争の恐怖の実感に近づける試み。

オレは、こいつでノックアウトされた口なんですけどね。

そんな、エノチューさんの最新作を、見てきたのでした。
今回の作品も、見方によっては戦争を想起させるものではないこともないけれども、でも、もう、銃だのマシンガンだの大砲だのはつくらないみたい。
現実が、そうした芸術をとっくに凌駕しちゃってるので、意味ない!って。
なるほどね。

口当たりのいい表現なんて、絶対にしない。観る者の心臓をわしづかみにして、ドキン!とさせて、心のどっかに確実に刻印を刻んでいく…、そんな表現ばっかりずーっとやってるエノチューさん、大好きです☆

エノチューさん、久しぶりに会いたいな。
でも、ほんまに神出鬼没の人で、全然捕まらんですからな(笑)




えっと、そんなに好きってわけじゃないけれども、今日は、こんなところですかね。

本日の1枚:
『銃をとれ』
頭脳警察

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