2007年10月11日木曜日

言わなければ、なにもはじまりません

またまた相方さんの話です。

相方さん、とある公共性の高い団体から、子供向けの指編み教室のイベントをやってほしい、と、依頼を受けました。

それ自体はすごく嬉しい話だっただろうし、相方さんもぜひやりたい!やらせてください!ってことで、ふたつ返事で引き受けたのでした。

このお仕事のギャランティがどうなっているのか、オレは知りません。もしかしたら無料なのかも知らないけれども、そこは相方さんが自分の仕事のスタンスと照らしてみて納得出来るものだったから、引き受けたのでしょう。公共性の強い団体からの依頼だから、ギャランティが出ても些少なんでしょうけれども、いずれにせよ、オレの知るところではありません。

ただ、指編みといえどもニットなのだから、ギャランティとはべつに、材料費が発生します。
この材料費は、参加者ひとり当たり500円まで徴収していいことになっている、とのことです。

もし、講習のギャランティがゼロ、もしくはごくごく些少なら、実際の材料は10円に抑え、材料費名目で500円徴収して、490円を抜いてしまえ!と、悪知恵をつけることも…、
ちゃう! そんな話ではないのでした(笑)

えーっと、相方さん曰く、材料費500円ではロクでもない毛糸しか用意することが出来ず、せっかく子供たちにニットに触れてもらってニットのおもしろさを知ってもらうチャンスなのに、これでは子供たちを失望させてしまうかもしれん…、と。

仮に、材料費として1000円をかけることが出来るとしたら、かわいくて子供の健康にも安全な毛糸が用意出来たとします。
でも、ひとり当たり1000円を徴収し、毛糸屋さんにそのお金を納めるということは、特定の業者、つまりこの毛糸屋さんを儲けさせてしまうことになるので、公共性の強い団体であるところのこの教室の主催者は、歯止めとして、材料費の徴収は500円まで、としているわけです。

さて、どうするか。

ラッキーなことに、相方さんの相方さんであるオレは、広告屋です(笑)

相方さんが勤めている会社であるところの毛糸屋さんに(相方さんが勤めている会社は、複業が認められています)、このイベントの協賛者になってもらって、タダで、もしくは1000円かかるところ500円にまけてもらって、毛糸を提供してもらいなはれ、そういう話を、してみなはれ!と、広告屋らしい発想で、申し添えたのでした。

すると、だ。

でも、相手は子供やし、場所はへんぴなところやし、協賛してもらうって言っても、なんの宣伝効果もないのに、そんな話しても断られるにきまってる…、と。

ここには、2、3の間違いがありますな。

まず、子供が相手とはいえ、お母さんが付き添いで来るにきまっているし、協賛者がアピールするべき先は、財布を握っているお母さんです。だから、訴求対象として、子供は関係ないですね。お母さんじゃなくて、おばあちゃんが付き添いで来られた日には、孫になんて絶対に甘い顔をするにきまってるんだから、しめたもんです(笑)

といっても、へんぴな場所で少人数相手。ここで協賛したところで、どう転んだところで、実利に直結することなど、ほとんどないでしょう。
でも、文化的な側面でのアピールは出来る。こういう、公共性の高い活動に協賛している会社です、という、草の根レベルではあるけれども、企業メセナをアピールすることが出来ます。イベントの参加者だけでなく、イベントを主催している公共団体に対して、地域に対して、そん公共団体や地域が持っているネットワークに参加している団体すべてに対して。
ましてや、これから継続してやることが出来たら、もともと商品の品質はいいのだから、品質のいい自社商品に触れてもらうことは、長い目で見て、利益に繋がります。

そういう話であれば、会社も乗ってきやすい。
あとは、会社が、費用対効果を考え、ゴーするか、却下するかだけのことです。

でも、そんな話でも、しないことには、なにもはじまりません。
相手は子供やし、場所もへんぴやし…、と、ネガティブな要素を並べるのは簡単なのですが、それがネガティブかどうかを判断するのはゼニを出す会社が判断すればいいことで、どっちに転んでも腹が痛まない相方さんが判断しても、仕方がないんですね。

会社が協賛してくれる可能性はかぎりなくゼロに近いかもしれないけれども、ゼロではない。でも、その話をしなければ、ゼロです。1%でも可能性があるのなら、話はするべきですね。話するのは、タダなのだから。宝くじも買わなければ絶対に当たりませんが、それでも宝くじなら1枚300円出さないとダメだけれども、今回のケースは話を持っていくだけなので、タダです。ノーリスク☆ やらないほうがどうかしてます。


で、結果。
話をしてみたら、協賛がきまった!と、相方さんからメールが来ました。
オレは昨日今日と東京出張中で寸暇を惜しんで仕事している最中なので、詳しいことは聞いていないのですが、とりあえず、協賛がきまった!と。

よかったじゃない☆ いやー、よかったよかった!


と、オレも喜んでるんですが、じつは、書きたいことはここからです(笑)
なにも、オレが言うたとおりにやれば上手くいくやろ!という自慢話がしたいわけではなくてですな、いや自慢したがりのオレは自慢もしたいのだけれどもそんなのは誰も聞いてくれないのでとりあえずは横に置いておくとしてですな…(笑)
というよりも、こういうことはアイデアの中身よりも(協賛というアイデア自体は、陳腐なアイデアです)、話の持っていきかたで成否が決まることのほうが多いので、相方さんの話の持っていきかたがよかった、ということです。
オレは、仕事上で、相方さんを褒めることは滅多にないですが、これは褒めましたね。彼女のキャリアを考えると、大いに、よくやりました。

で、ここから先、なにを言いたいのかというと…、

相方さんの会社の社長は、従業員に対して、お前らはやる気があるのか!と、よく叫んではるそうです。
オレは、この社長にお会いしたことはないのだけれども、この社長の言いたいことが、痛いほどわかります。

きっと、従業員の人たちは、やる気はあります!なんでもやります!だからなんでも言ってください!と、返しているはずです。
でも、経営者からみれば、そんなもんは、やる気のうちには入らんのですね。
なんでも言ってください!って…。んなもん、言われたことだけをやろうとするのならね、どんだけ一所懸命やってくれたとしても、それは、バイトでじゅうぶんなんですよ。
そうではなくて、せっかく、会社には商品もカネも人もいてるのに、個人でやっているかぎりでは手に入れるのが困難な、商品やカネや人がいてるのに、それを使ってやりたいことはないのか?と、こう言ってるわけです。
会社における、やる気、とは、そういうもんです。
この会社の社長は、毛糸を売りたい、だからこそ、自分の会社を使って、毛糸を売っているわけです。やりたいことを、会社を使ってやっているわけです。
皆、毛糸が好きなんでしょうが、その毛糸をアピールするためのイベントをしたい人だっているだろうし、毛糸の本を出したい人もいるだろうし、教室をやりたい人だっているだろうし、あるいは会社の毛糸でつくった作品を女優さんに着てもらってテレビドラマに出てもらいたい、と、考える人もいるでしょう。
そういうことをひとりでやるのは大変だけれども、幸いにして、皆、縁があってこの会社で働いていて、そこには商品もおカネも人も、ついでにいえば情報も揃っているのだから、自分がやりたいことをもっともっと出してくれよ!と、この社長は言っているわけです。
端的にいえば、もっと会社を利用して、自分を表現してみろ!と。
そのための環境を整えてやるのが、経営者の仕事なのですよ。

それが会社の利益に繋がるものなのかどうかを判断するのは経営の仕事ですが、判断するもなにも、そうしたアイデアや、これをやってみたい!というものがなければ、なにもはじまらんのです。

それをね、やりたいことはないことはないけれども、ちゃんと計画立てたわけでもないし、そんなん口にしてもバカにされるだけやから言わない…、ではね、なにもはじまらんのです。
最初はアイデアだけ、思いつき、ホラ、妄想…、そんなんでいいんですよ。それが、種です。
種を育てる方法、つまり、理屈は、あとからかしこい人がなんぼでもつくってくれるんです。経営陣というのは、そのためにいてるんです。
もちろん、却下されることのほうが多いですよ。商売の種なんて、そうそう転がってるもんではないですから。でも、言わなければ、なにもはじまらない。

新規事業のアイデアを一番たくさん出している人が社長だというのは…、じつはそういう会社は多いですが、それはやはり、悲しすぎます。
従業員に対して、なんのためにここで働いているの?と、問いたくもなります。
古くはQC活動、最近では企業内ベンチャーなんて制度があるけれども、んなもんね、わざわざ制度化しなくても、自然と沸き上がってこないとね。

勢いのある会社というのは、どんどん、商売の手を広げていきます。
それは、会社における勢い、というものの正体が、やりたいことがいっぱいある、ということだからなんですね。
会社というところは、いくらでもそういうふうに出来る場所だし、そうやってこそ、おもしろい場にもなります。
それをしなければ、会社では、死んでいるも同然です。

今回、相方さんが会社に対して協賛の話を持っていったというのは、相方さんが、そういう意味でのやる気を見せた、ということにほかなりません。今回はゴーサインが出ましたが、たとえ却下されていたとしても、やる気を見せることは出来ました。
オレは確信を持ってますけれども、このことは、間違いなく、会社に評価されてます。

それが初めて出来たからこそ、このたびは、相方さんを大いに褒めてあげようと思っています。
相方さん、でかした☆

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