2007年12月21日金曜日

『ひとはみな、ハダカになる。』


理論社という、社名からしてかった〜い出版社から出ているシリーズもので、『よりみちパン!セ』というのがあるのですが、このシリーズは、硬軟織り交ぜて、名著を連発している、なかなかのシリーズです。

日本、基、世界の漢字学の最高峰、白川静先生の『神さまがくれた漢字たち』、孤高のノンフィクション作家、森達也による『いのちの食べかた』なんていう珠玉の名作から、人気作家の重松清による『みんなのなやみ』、みうらじゅんによる『正しい保健体育』なんて軟らかいところまでカバーしていて、サブカル青少年は必読のシリーズですな。ちなみに、みうらじゅんの『正しい保健体育』は、震えるほどの名著です。

一応、対象年齢が、14歳、つまり中学生以上となってまして、全シリーズを図書館に揃えている中学校も全国にたくさんあります。児童書エリアの本ですからな。

が、しかし、こんなのもある。

『こどものためのドラッグ大全』(深見填)
『オヤジ国憲法でいこう!』(しりあがり寿)
『男子のための人生のルール』(玉袋筋太郎)

真っ直ぐに教育目的で敢行されているシリーズなのですが、下手をするとPTAから有害図書指定されかねないものもキチンと出すという、根性の座ったシリーズでもあるのですよ。

で、今回。
ついに決定版が出ましたわ。

『ひとはみな、ハダカになる。』(バクシーシ山下)

バクシーシ山下といえば、『女犯』シリーズで一世を風靡したAV監督。
その彼がこの本でなにを語っているかといいますと、もろ、アダルトビデオの世界(笑)
彼が実体験したエピソードが満載でして、それがいちいち面白いんですけどね。

彼がアダルトビデオの世界に飛び込んで一番最初にやった仕事は、ロバを迎えにいくこと(笑)
はい、獣姦モノの撮影ですね(笑)
おまけにこの撮影で一番の売れっ子出演者はロバでして、次はCMの撮影がありますから〜!って、分刻みでスケジュールをこなしていくロバらしいのですよ。

そういう、どうでもいいエピソードが満載なのですが、バクシーシ山下の射精産業を見る目は冷徹で、人間の欲望というのは、ハードの進化・普及とソフトの誕生、法律や規制と有機的に絡まりあって、それらによって変化させられ、方向づけられているものなのだという指摘は、相当に鋭いと思いましたです。
つまりですな、オレたちは、自分の意志ではなく、時代のトレンドによってちんちんを握らされている、ってことですが、これを正面から言い切った人を、オレはほかに知りません。

オナニーを覚え立ての中学生にとっては、厳しすぎる指摘です。

さらにですな、AV女優というのは、性格でも努力でも演技力でも才能でも教養でもなくて、唯一絶対に必要なものは、容姿である、という、容姿第一主義を説く、実も蓋もない結論(笑)

これ、無限の可能性を秘めている、と、建前上はされている、中学生男女を対象にした本なんですけどね(笑)

AVの世界を特殊と見なし、蓋をするのは簡単なのだけれども、特殊な世界から見えてくるものも確実にあって、目を背けるだけでは済まされないのはたしかだとしても、それにしても…、いや〜、理論社、やりますな。こいつを全国の中学校と高校の図書室にぶち込みますか〜。
核爆弾に等しいな☆

中学生がちゃんと読めるように、小学4年生以上で習う漢字にはルビが振られ、本文の文字サイズもでかく、挿絵も豊富。じつに丁寧なつくりで、中学生と向き合ってます(笑)

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