2006年4月8日土曜日

フジハラビル





知り合いが絵の個展を開いたので、行ってきました。
会場は、大阪天満宮の南にある、フジハラビル。とてもとても、味わいのあるビルです。
はっきり言って、知り合いの絵は常時見ているので、個展はどうでもよかったんです。それよりも、お目当てはフジハラビル(笑)

大正12年の建築。外壁は味わい深い茶色のスクラッチタイルで、地下1階、地上4階。ギャラリーやデザイン事務所などとして使われてるビルなんです。
このビルのすごいところは、オーナーの藤原さんがたったひとりで10年がかりで補修されたというところ。
今もあちこちを補修していて、人を飽きさせない仕掛けも常に更新されてます。

薄暗いエントランスを通って階段を上がったところで、不意に小鳥の鳴き声がした
り(センサーで人に反応する仕組みになっている)、窓をのぞくと向かいの屋根に陶器の犬が寝そべっていたり…。
普通のビルにはない楽しみかたが出来ます。

ちょうどオーナーの藤原さんがいらっしゃったので、お話を伺ってきました。
藤原さんは、もともとは東京の大学で民事訴訟法を教えていた法律専門家です。バブルの最中の18年前、お父さんの藤二郎さんが亡くなり、それを機に、ビルのオーナー職に就かれたとか。
18年前の当時は、ビルは廃墟に近い状態だったそうです。
取り壊そうかとも思ったらしいのですが、お母さんの「愛着のあるビルだから残してほしい」というひとことが、藤原さんを思いとどまらせました。

それからというもの、ホームセンターに毎日通い、道具を買っては壁を剥がしたりペンキを塗ったり。壊れていたトイレも修理したそうです。もちろん失敗も数多く、水道管を破裂させたことも何度もあるとかで。
それでもめげずにひとりで格闘し、ビルは少しずつ生き返らせます。
素人仕事ゆえ、ペンキ塗りにムラがあったり床がでこぼこしていたりもするんですが、それがまた不思議と建物の味わいを増してるんですよ。

生まれ変わりを機に、「フジワラビル」というビル名を、少しでも興味を持ってもらえるようにと「フジハラビル」に変えました。

屋上には、光がたっぷり射し込むサンルームがあるんです。これも、藤原さんのお手製。
ビルを訪れた人に、最上階まで上がってきてもらう仕掛けのひとつらしいのですよ。
夜、ガラス張りのサンルームに照明が灯ると、一段と魅力的な姿が夜空に浮かび上がります。

ここみたいに生き生きとした近代建築って、滅多にないと思います。
それは、オーナーの藤原さんが、この建物に惜しみなく愛情を注いでおられるからです。
訪れてみると、そのことがよくわかります。

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