2006年6月10日土曜日

『ふたつの黒い雨』





『ピカドン・プロジェクト』から、CD絵本『ふたつの黒い雨』が出ました。
絵、黒田征太郎。音楽プロデュース、近藤等則。歌、都はるみ&古謝美佐子です。すごすぎるラインナップですな。 

どっから話をすればいいんだろうか。。
まず、古謝美佐子から。
5年前に『童神』で抜群の存在感を示した、沖縄のみならず現代日本最高のシンガー、古謝美佐子(元ねーねーず)の周辺が、最近、にわかに騒がしくなってきました。
昨年は、モンゴル800と共作して、子守唄『百々(もも)』を発表し、その続編として『黄金ん子(くがにんぐぁ)』も発表しました。
どっちも、シンガーとしてよりも先に、女性・母・祖母としての古謝美佐子という存在が赤ん坊に歌いかける印象で、生の人間が見える素晴らしい歌です。彼女の歌いっぷりはあまたの歌手のなかでも突き抜けてますが、その彼女が、ドロッとした生の部分を見せるのだから、誰も敵いません。この人は、本当に、どんな存在になっていくんだろうか。
んで、今年に入ってからだと思うんですが、次に発表したのが、『黒い雨』。
もともとが江州音頭の音頭取りである桜川唯丸が歌っていた反戦歌、戦争恨み節ですが、これも今では古謝美佐子の重要なレパートリーになってます。
嘉手納基地のそばで生まれ、基地のために父親を亡くし、今も基地のそばに暮らす古謝美佐子が、「沖縄ではまだ戦争は続いている」と歌うんです。どの歌も、命がテーマですね。
べつに、そんな背景を知らずとも、じゅうぶんに説得力のある歌いっぷりです。そこらへんが、古謝美佐子のすごいところでもあるんですが。

都はるみについては、過去日記で散々書いたので繰り返しませんが、今回は、ワールドミュージックに取り組む彼女の面目躍如ですね。

んで、ピカドン・プロジェクトなんですが、これは、言葉からも容易に想像出来る通り、広島・長崎の原爆投下をイメージさせ、反戦を訴えるプロジェクトです。
黒田征太郎、近藤等則、安藤忠雄、荒木経惟が発起人。というか、9.11の同時多発テロ以降、強力に反戦運動を押し進めている黒田征太郎が中心になってやってるプロジェクトですね。
そっから出たCD絵本が、『ふたつの黒い雨』です。
このアルバムで都はるみが歌う『こころの街』は、ジャズ・トランぺッターの近藤等則が、あえてド演歌風に仕上げて、かなり面白いです。この素晴らしいボーカリストの歌声は、優しそうに聞こえて、内実は怒りに震え、相当にドスがきいてますね。都はるみは、近年、発動の幅を広げてから、迫力も深みも格段に増したように思います。彼女の活動をメディアはもっととりあげるべきですよ。
そして、昨年から今年にかけての沖縄音楽の最重要作である、古謝美佐子が歌う『黒い雨』。

この2曲を聴きながら黒田の絵を見ていると、世界の憎しみの連鎖について考えさせられます。音楽がそれを断ち切ることに成功した例などないし、それは楽天的な妄想だということもオレはじゅうぶんに承知しているつもりなんですが、それでも、なにか、考えさせれてしまいますね。最近、悪いニュースばかり耳にするもんで。

でも、音楽なんだから、反戦だとか、そういう背景は関係なしに、じゅうぶんに楽しめます。
それだけの力のある音楽になってますよ、これは。

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