2006年6月18日日曜日

アメリカで本が出るらしいです

なんか、本が出るらしいです、それもアメリカで。

いや、これだけではなんのことかわかりませんな。

ちょうど5年前に、『ぼくらの音楽の原風景』という本を書いていたのでした。
これは、オレがちっこい頃から多大なる影響を受けてきたアメリカの大衆音楽について書いたものです。

ロックンロールの歴史。
ロックンロールの源となった、カントリー&ウェスタンのそのまた源流のアパラチアン・マウンテン・ミュージック。
マウンテン・ミュージックの故郷であるアイリッシュ・トラッド。
ロックンロールのもうひとつの源流であるブルーズ。
ゴスペル。
ハワイイアン。
それぞれの音楽が生まれた背景にあるアメリカ社会の変遷。

こんな内容です。

ノンフィクションというか、エッセイというか、評論集というか、まあ、そういうものですね。

小説だと、ラクなんですけどね。
小説は、その内容が事実である必要はまったくなくて、どんな嘘を書いてもいいことになってますから。
もちろん、細部を省略したり、辻褄が合わないようなものは論外ですが、その嘘が、どんなに突拍子がなくても、もっともらしく、説得力を持っていれば、それは小説として成立します。
小説は、いうまでもなく虚構であり、つくりものですね。そして、つくりものを徹底させることで、現実をやっつける「真実」を出現させようと目論む行為です。

元来が妄想好きだし、自由度が高いから、オレは小説のほうが好きなんですが、これは、小説ではないもののフォルムで書かれています。
事実の積み重ねをベースに、書いてます。
小説のようにではなくて、厳然たる事実の積み重ねによって、真実に辿り着こうと目論んだ本です。
厳しく厳しく、事実を見つめながら書いた本です。

たとえば、いくつかの事実を歴史のなかからピックアップし、整然としたストーリーをつくろうとしたとき、その横には、想定したストーリーにそぐわない、べつの事実が、必ずといっていいほど、忽然と存在します。
それを例外事項として無視してしまうと、とてもラクなんですけどね。でも、事実なのだから、向き合わざるを得ません。事実を積み重ねて書くということは、そういうことです。

なんでアメリカの大衆音楽だったのかというと、それはもう、物心ついたときから浴びるようにして聴いてきて、今でこそそれ一辺倒ではなくなったとはいえ、相変わらず、浴びるように聴いてるわけですよ。ある時期、それがすべてだったこともあります。
そんななかで、オレは、ある種の価値観を、アメリカ音楽を聴くことによって、培ってきました。
それをね、きちんと考えて、相対的に捉えて、普遍的なものを抽出したいと思ったんですよね。
オレは、書くことによって物事を理解する種類の人間なので、書くことで、客体化し、考えを深化させ、理解したかったんです。

「正体」という言葉を、研究者の新英和辞典を引っぱり出して調べてみると、「coming from」とあります。
つまり、出自、あるいはどこからやって来たのか、ということが、どうやら、「正体」の言葉の意味であると、少なくとも英語文化圏ではなっているらしいのですよ。
そんなことを考えながら、オレがあれほど入れ込んできたアメリカの大衆音楽が、いつ、どこから、どのようなかたちでやって来て、どのように変化していったのかについて、探っていきました。
アメリカに何度も取材に行ったし、南太平洋にも行ったし、アイルランドにも行きました。

アメリカの大衆音楽の歴史は、そのまま、異文化の流入、混合、融合、離散の歴史でもあります。アメリカの歴史そのものですね。
見知らぬ者同士が出会う瞬間は、それが対立をもたらすものであれ、共存をもたらすものであれ、心臓が爆発するような、コミュニケーションの瞬間です。
コミュニケーションって、日本語でなんと翻訳したらいいのかわからないけれども、アメリカの音楽の歴史は、この、コミュニケーションの連続で、そこが、僕の心をとらえて離さないところでもあります。


じつは、このテキストを書いた5年前、日本の出版社に売り込みをかけて、いくつか乗ってくれるところがあったんです。

でも、オレは、これを全3巻で書きたかったんですよ。
上記のは第1巻で、それ以降、
・ニューオリンズを窓口としたアメリカとラテン音楽、地中海音楽の相互影響について、
・ジャマイカとナイジェリアを窓口とした、ブラックミュージックの変異について、
・60年代、70年代のアメリカの意識革命が音楽に与えた影響とそのフィードバックについて、
・グレイトフル・デッド、
・MTV、メガストアの出現と、流通の劇的な効率化がもたらしたものについて、
・エレクトロニック楽器とコンピュータとブラックミュージックの相性について、

これらをすべて網羅して、全3巻で完成する予定なんですが、まだ1巻しかいてない状況で(ちなみに、今現在もまだ書いてない…)、さすがに全3巻を出版しましょう!と言ってくれるところはなくて、売り込みをかけたのはオレなんですが、そのオレが、首を縦に振らないで今日に至っているというかんじで(笑)

さらに、英語に翻訳して、アメリカでも出版してくれなきゃイヤだとまで、駄々をこねまして(笑)
だって、アメリカ人にこそ、読んでもらいたいんですよ。おまえらが普段聴いてる音楽はこういうことなんだぞ、って、日本人のオレが言ってやりたかったんですよ。そこらへんのアメリカ人よりも、オレのほうがはるかに、アメリカの大衆音楽を聴き込んできましたからね。

んで、まあ、学術論文か!と言いたくなるほどにマニアックな本なので、それを全3巻、しかも翻訳してアメリカの出版社とも契約しろなんて話をすべて飲んでくれる出版社なんて、あたりまえの話ですがどこにも存在しなくて、今の今までペンディングになっていた状態で。

ところがですな、日本にオフィスを持っているアメリカの出版社がですな、日本語で書かれたオレのテキストを読んで、これをぜひアメリカで出したい!と、言ってきたんですよ☆

これは、ちょっとビックリしました。
まったく予想してなかったし、この本がアメリカで出るのは相当に嬉しいので、全3巻じゃなくてもオッケーしちゃいました(笑)

今から、英訳の作業に入るそうです。オレ、英文なんて校正出来ないんですけど、どうするのかな?
出版は、来年早々だそうです。。

ところで、印税契約にするかしないか、迷ってます。どーしたもんかな?




ワールドカップ日記:
オランダvsコートジボワール=2-1
コートジボワール、立ち上がりが固かったせいで先制点を許しちゃったけれども、それ以外は、素晴らしかったですね。後半なんて、オランダが防戦一方だった。こんなオランダ、見たことないですよ。それでも、オランダの決定力のすごさというかなんというか、結局、シュート2本でゴール2点ですもんね。
今大会のアフリカ勢はすべて初出場だけど、どこも強いですわ。従来の個人技と身体能力に加えて、守備がしっかりしてる。アフリカは新時代に突入しましたな。

メキシコvsアンゴラ=0-0
メキシコは、ボルヘッティがいないだけで、こうも得点能力が落ちるとは。中盤のパスまわしは素晴らしいし、これこそ日本が目指す道だと思うのは今でも変わらないですが、やっぱ、メキシコのクラスでも、才能のあるFWがいるといないのとでは、チーム力に差が出ちゃうんですね。日本にFWが足りないと言われて久しいけれども、それも仕方がないのかな、と、この日のメキシコを見て思いました。

ポルトガルvsイラン2-0
イランがアジア勢で最初にワールドカップを去ることになってしまいました。悲しいわ。今んところ、勝ち点をとったのは韓国だけですからね。ポルトガルは、4度目の出場で、40年ぶりに決勝トーナメントに出場決定。4度目という少なさも、40年ぶりという長さにも驚いたけれども、ということは、フィーゴらの黄金世代が活躍する以前はエウゼビオまで遡るってことなの? そんな意外な印象を持たせるほど、近年のポルトガルは素晴らしい。C・ロナウドのような逸材も出てきたことだし、しばらくはポルトガルの美しいサッカーを楽しめそうです。

チェコvsガーナ=0-2
チェコ、よもやの敗戦。それも、完敗! これ、今大会一番のアップセットでしたね。チェコはポポルスキーの不調とコラーの負傷が響いたとはいえ、ベスト4には行けるだけの力があるチームだけに、まじ、ビックリしました。負の連鎖に陥ってしまったのは間違いないけれども、ガーナが、素晴らしすぎた。特にディフェンスの固さ、粘り強さは、従来のアフリカのイメージを完全に覆しましたね。このグループは、イタリア以下の2位争いが混沌としてきましたな。それにしてもチェコが敗れるとは…。

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