2007年6月29日金曜日

マンボの車


高麗橋をわたって、堺筋を越え、御堂筋に向かう途中、三井ガーデンホテルの南向かいに、そのクルマは停車してます。
ちょこちょこその道を使っているのだけれども、朝や夕方の早い時間には見ることはできず、夜遅くなったときだけ、その車を目撃することが出来ますねん。車種は調べるほど近づいたことはないし、そもそも車のことは詳しくないのであれなんですが、国産の中型セダンで、色はシャンパン・ゴールド。これは、あれですかな、つまりよくある、おっちゃんのクルマ、というやつか? 少なくとも、若いもんが乗るような車でないことは、いくら車に疎いオレでも、なんとなくわかるようなシロモノなんですがね。

で、これがね、不思議なんですよ。
いや、なにが不思議って、その車の駐車の仕方がね。

大阪の方はご存知やと思うんですが、あのあたりの道路は、歩道や路側帯がないんですね。車道の端からいきなり建物が建っていて、つまり、路上駐車の常套手段である「歩道にウィリー」が出来ない場所なのですよ。だから、そこいらに駐車するとなると、道路の真ん中に車を停めることになりま。んなもん、今やったら、きっちり、例の民間の取り締まりのオッサンが来ますがな。

でもね、そこだけ、なんのためなのかわからないが、コの字型のへこみがあるんですわ。で、そのへこみの容積が、きっちりそのクルマ1台分の大きさ(笑)もうね、そのクルマを停めるためだけにつくられたのか?ってくらいで。
ただ、あのあたりは古い町屋が点在している場所だから、そうそうビルが建ったり壊れたりしている場所でもなく、そのへこみも、相当むかしからそこにあると思われるんですね。
ということは、何代もまえから、そこを駐車場として使っていた、というふうにも考えられるんですわ。とすると、何十年にもわたってきっちりおなじ大きさの車ばっかりを買い換えなければならんことになります。
しかしですわ。オレはよく知らんのですが、モータリゼーションというは、その家の思惑とはなんの関係もなく変遷してきていると思われるので、何代にもわたって同じサイズの車を買い替える、というのは、不可能なんじゃないか?
第一、クルマを停めるためにつくられたのなら、もちょっと余裕を持った設計をするのが常識というものだと思われるんですが、そのクルマは、それこそ数センチの隙間もないほどにね、おなじ長さ、おなじ幅のそのへこみに、きっちりハマって停車しているのですよ。

これがいかに驚異的かということは、クルマを運転しないオレにもわかりますわ。

縦列駐車と車庫入れって、教習所でも多くの人のネックになってるんでしょ。バックしながら障害物に当たらず離れずきれいに収めるために、アクセルとブレーキで速度を制御しつつミラーと目視でクルマと目的地と障害物の位置関係を把握し、細かいハンドリングでクルマの方向を制御するといった複数の技術を臨機応変に組み立てなければならんわけでしょ。(←ものの本にそのように書いてありました。笑)

これ、ふたつの難関を合わせた縦列型車庫入れでしょ。合わせ技1本みたいなもんでしょ。
縦列駐車とは読んで字のごとく、前後のクルマと同じ列になるように、はみ出さないでまっすぐに駐車することですわな。
それでも列の先頭か、1番後ろだととても停めやすいけれども、大方の場合は車と車のあいだに入れなければならんわけでしょ。ここで、どのぐらいのスペースが空いていれば駐車することが出来るかが、個人の腕前にかかってくるわけですわね。オレの相方さんなんて、そんな腕前は絶対にないですわ。
前後に1台分ずつ、自分のも入れて3台分くらいの空きがなければ自信のない人もいれば、前後に50cmずつ空いていれば停めてみせる人もいます。
オレも、いろんな人の車の助手席に乗ってきましたが、後ろの車の発進のことも考えて、前後に2mくらいの空きで停めるのが普通じゃないですかね。

が、しかーし、この場合、前後は壁です。それも、車の前後には、10cmも隙間がないような、寸止め状態ですわ。しかも、両方のミラーをちゃんとたたんで、車幅いっぱいのスペースに、道路にはみ出さず、前後の家の壁に対して、オレら印刷業界の用語でいうところの「ツライチ」で停めているのでした。

繰り返しますが、これがいかに驚異的な神技であるのかは、車を運転しないオレでもわかります。
いったい、どういう技で幅寄せしてるんや?
初めてそれを発見したとき、オレは、しばらくフリーズしてしまったですよ。

オレの理解によると、幅寄せの難しさは、いかに左側ぎりぎりに寄せるかというところにあるんじゃないですかね? 仮にこの車のオーナーが必ず一発で左の壁ぎりぎりに車を沿わせる技術の持ち主だとしましょう。それでも、車体を真っ直ぐに立て直すためには、わずかでも前進と後退をしなければならんでしょう。このスペースのどこに、そんな余裕があるというのか!

でも、タイヤはきれいに真っ直ぐになってるんですわ。
考えられるのは、停車状態で無理矢理ハンドルを切ってタイヤを戻すことくらいですが、それにしたところで、後ろが寸止め状態でクルマが真っ直ぐになるように、バックでカーブさせて進入しなければならんわけですわな。なにしろ前もぎりぎりだから、真っ直ぐにしてから交代するなんて余裕は、まーったくないんですよ。
なんか、想像すればするほど、すごい車両感覚であることがわかってきます。

この車がね、いかにも車好きが乗るようなスポーツカーかなにかやったら(よう知らんのですが)、まあ、世間には上手いやつもいてるわな、で終わりです。
でも、ここに停まってるのは、オッサンが乗るような、セダン。しかも、駐車の時間帯からして、普通に通勤に使っているようなのですよ。
そいつが、こんなにアクロバチックな技を見せてる。ことさら主張するわけでもなく、ごくさりげなく。そこが、ちょっとかっちょいいですな。

ほんまに、マジで、一回でいいから、実際に技を披露しているところを見てみたいもんです。

むかし、テレビで、野球中継が早く終わったときに放送される、広川太一朗がナレーションを付けている「世界のビックリ人間」みたいな番組で、車1台分のスペースに猛スピードで突っ込んでいって、急ブレーキと逆ハンを駆使してスピンさせて、その隙間にぴったりと収める超人を見たことがあるんですけどね。
そんな派手なパフォーマンスをね、人知れず、まだ見ぬ彼も夜毎行っているのかと思うとね、ちょっとかっちょいいじゃないですか。

誰か、もし見かけられたら、オレに教えていただきたい。非常に気になる今日この頃です。
というわけで、マンボすら踊っていそうな車なので、そういう日記の表題(笑)




車といえば、やっぱ、ブランキー☆

ブランキー・ジェット・シティ / ガソリンの揺れかた



こっちはバイクだけど。

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